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下町ボブスレー、五輪挑戦の6年間。
町工場の親父が捧げた匠の技と誇り。
posted2017/07/03 07:30
text by
神津伸子Nobuko Kozu
photograph by
Nobuko Kozu
「ライバルは、フェラーリにBMW」
モノづくり世界No.1の力をアピールする場は、オリンピック。
下町ボブスレーネットワークプロジェクト推進委員会(委員長・國廣愛彦)が発足して6年の時が流れた。オリンピック競技のハード作りによる町おこしを目指している一大プロジェクトは、「最高のボブスレーのソリで、下町の技術力を発信しよう」との想いのもと、平昌五輪を目指すマシン作りは最終段階に突入した。
大田区の町工場で、五輪出場を狙う10号機は着々と作り上げられている。
「今、目指すのは五輪出場だけではない。私たちはメダルが獲れる!」
チームが見据える目標は、さらに上へと向かっている。
五輪本番まで残り8カ月を切った6月中旬、下町ボブスレー10号機の製作説明会が、大田区産業プラザで開催された。冷たい雨にもかかわらず、区内の数十社の協力企業が集まり、平昌に向けたボブスレー製作への熱気と意気込みが溢れかえった。
約200社が集結したプロジェクトも、10号機に。
10号機は様々な改良がなされている。選手たちからの要望に対する対応も大きく反映され、改めて町工場の技術が素晴らしいとの感想も報告された。
参加企業がそれぞれ持ち帰る新型機種の図面は、機体のパーツごとに分けられており、テーブルに並ぶ。その図面を見て設計者に質問する人、サッと会場を後にする人間など様々だったが、10機目ともなるとそれぞれ慣れた様子で、各自の担当図面を手にしていた。
日本の技術力が集中する東京都大田区は、金属加工業を得意とする町工場が多い。
製作に関わるのは100社以上で、協賛社を併せると約200社を束ねた「下町ボブスレーネットワークプロジェクト推進委員会」が国産マシンを製作。平昌五輪を目指すジャマイカ代表に2人乗りソリを無償提供することが、すでに決定している。今までに9台を作り出して、五輪本番用の集大成製作に着手した。
しかし地道にモノづくりに徹していた町工場が、なぜ五輪という舞台で世界に挑むことになったのだろうか。