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下町ボブスレー、五輪挑戦の6年間。
町工場の親父が捧げた匠の技と誇り。 

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神津伸子

神津伸子Nobuko Kozu

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photograph byNobuko Kozu

posted2017/07/03 07:30

下町ボブスレー、五輪挑戦の6年間。町工場の親父が捧げた匠の技と誇り。<Number Web> photograph by Nobuko Kozu

大田区とジャマイカ。接点がないはずの人々がボブスレーを介して、それぞれの夢を実現させようとしている。

ジャマイカの有望株からも信頼を寄せられる。

 転機となったのは、世界への情報発信を始めたことだった。すると24年前に公開された映画『クール・ランニング』のモデルとして知られるジャマイカ代表チームから、下町ボブスレーに声がかかる。

 さっそくチームはジャマイカ代表を長野のボブスレーパークに招聘、滑走テストを重ね、つつ要望に丁寧に応えた結果、五輪に向けて採用に至った。 

 そのジャマイカ代表は今秋から、平昌五輪出場権を得るために北米、欧州でのカップ戦の連戦を戦う。3つ以上のコースで戦い、5試合以上に参加しなければならない。五輪出場のためには1つでも多くの試合に出場することが必要となる。それと同時に遠征費をまかなうためのスポンサー探し、募金活動も広く募っている。

 ジャマイカは世界ランキングで最高位3位を記録した女子のジャズミン・フェンレイターヴィクトリアンに大きな期待がかかっている。ジャズミン自身も「ジャマイカ、ジャパン、ジャズミンの“J”は運命を感じる。マシンも、どんどん進化していることも良くわかる。目的は、勝つことだけでなく、きれいなボブスレーも見せること」と、信頼を寄せている。

「『町工場はカッコイイ』と思ってもらえれば」

 日本国内におけるボブスレーの環境は厳しい。下町ボブスレーのテスト走行が行われていた長野市ボブスレー・リュージュパークの休止が、今年4月に発表された。札幌市の手稲山ボブスレーコースが2000年に廃止されて以来、唯一のコースだった。最新マシンのテストも今後は海外まで足を伸ばさなければならない。

 それでも彼らには大きな夢がある。

 細貝は“下町ボブスレー”の大きな目的の一つをこのように明かす。

「子供たちに『町工場はカッコイイ』と思ってもらえれば、本当に嬉しいです」

【次ページ】 何もないところから、モノを作り上げていく。

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