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日本バスケはアルゼンチンに学べ。
技術委員長が語る新監督と強化策。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byAFLO
posted2017/06/25 07:00
八村塁の帰国会見にも出席した東野氏。日本バスケ強化について、独特のアプローチで挑もうとしている。
川淵さんは「良い監督に来てもらうために考えろ」と。
――昨年6月に技術委員長に就任した際、東野さんの頭の中にラマスさんのことはあった?
「なかったといったら、嘘になります。最初に30人のリストを作ったんですよ。そして、昨年のリオ五輪では男子の試合だけでも22試合を現地で見つつ、そのリストを持って関係者と会いました。大会中に3回ミーティングをして、最終的に候補は5人にしぼったんです。いくらまで予算を使えるのかを考えるのではなく、『良い監督に来てもらうためにはどうしたらいいのかを考えろ』と川淵さんからは言われていました」
――ラマスさんと会ったのはいつでしょう?
「リオ五輪の視察を終え、日本に帰国してから2週間くらいして、今度はアルゼンチンへ飛びました。ラマスさんはサンロレンゾというチームを率いて、シーズンに入る前。すぐに引き受けてもらえる気配はもちろんない。そこで、僕は予定よりも1週間ほど長く滞在することにしました」
――なぜでしょう?
「その間、毎日のようにラマスさんと会いました。ラマスさんの家へも押しかけました。『話をさせて欲しい、こちらの考えを伝えさせて欲しい』と。そもそも、トップレベルのコーチって、基本的にフリーの状態にはないんですよ。僕は『クラッシャー』というあだ名で、引き下がらないので(笑)。粘り強く、どんどんクラッシュしていく。そのあと、秋にラマスさんが率いていたサンロレンゾは、NBAのトロント・ラプターズとプレシーズンゲームを戦ったんです」
家どころかトロントにまでついて行った熱意が伝わる。
――まさか……。
「トロントへも行きました(笑)。しつこいと思っていたでしょうねぇ」
――執念ですね。
「ラマスさんは今シーズンまでサンロレンゾのヘッドコーチを務めるわけですが、来シーズンからそのポストにつく人が決まって、(7月からは)フリーになる。しかも、ラマスさんと交渉をするなかで、『オレがヘッドコーチになったら、こういうことは出来るか?』というような話を、むこうからしてくるようになったんです。日本が強くなるためにはどうしたらいいか、というのを自ら提案してくれる人じゃないと無理だと思ったので、それは嬉しかった」