マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
清宮幸太郎の通算100号達成に思う。
もっと大事な数字があるだろう……。
posted2017/06/18 09:00
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
Hideki Sugiyama
6月4日、「愛知招待試合」の小牧市民球場で、早稲田実業・清宮幸太郎が享栄高戦の9回裏に「高校通算100本塁打」を右中間場外へ放り出してみせた。
今年の高校ナンバーワンスラッガーとして、また稀代の長距離ヒッターとして、1つの大きな区切りをつけたことに、私は大きな祝福を送りたいと思う。
清宮幸太郎のバッティングはすばらしい。
パワー、スイングスピード……それ以上に、ボールの“南半球”をなかば擦るようにして打球に猛烈な逆スピンを与えられる技術と、投手に緩急で体勢を崩されても、インパクトではなんとか帳尻を合わせてしまう天才的なタイミングの良さ。この2点をおいて、清宮幸太郎のバッティングを語るわけにはいかない。
ただ今回は、清宮幸太郎のバッティングについて語るわけではない。
「通算本塁打」が初めて使われたのは、いつ?
通算本塁打。
私の記憶では、確か今から30年ほど前。スポーツ紙「日刊スポーツ」の武石記者執筆の高校野球記事の中で、初めて使われた表現ではなかったかと思う。
当時は、通算20本塁打を超えると話題になっていた。のちに社会人野球・東芝からドラフト3位でロッテに進む丹波健二内野手が東京・日体荏原高校時代「通算●本塁打を誇る……」といった調子で伝えられていたのを覚えている。
「通算本塁打」とは、それをカウントしている機関とか組織はない。つまり基本、自己申告である。
本人が数えているか、監督、部長、チームによってはマネージャーがカウントしていることもあると聞くが、いずれにしても「30本です」と言われたら、「ああ、30本なんだ……」と了解するしかない未公認の数字、記録である。