マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
清宮幸太郎の通算100号達成に思う。
もっと大事な数字があるだろう……。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byHideki Sugiyama
posted2017/06/18 09:00
甲子園と、高校のグラウンド。同じ1本のホームランでも飛距離、そして人々に与えるインパクトは大きく違う。
「通算50本」のスラッガーが生まれた理由は……。
だいぶ前に、こんなことがあった。
関西地区のある高校に、突如「通算50本」のスラッガーが現われた。
そんなに有名でもない学校に、そんな“すごいヤツ”が現われたというのはなんとも興味深かった。だからその高校に電話をして、そのスラッガー君のプロフィールを訊いてみると、当時の野球部長が「実は種明かしがあるんですよ」と、クスクスっと笑って教えてくれた。
「彼はホームランの半分以上を、ウチの学校のグラウンドで打ってるんですけど、ウチのグラウンド、レフトが80メートルぐらいしかないんですよ」
サッカー部との共用の長方形のグラウンド。
「ちょっと角度つければ、すぐ入るんですよ」
やや申し訳なさそうながら、誠実な説明に“ああ、そういうことなのか……”と納得したものだ。
グラウンドの大きさは、まちまちである。
グラウンドのサイズが小さい場合、たとえば外野に高いネットが張ってある。そのネットの中段にラインが描かれ、“これより上に打球が当たったらホームランですよ”とするなど、いわゆる「グラウンドルール」があることが多いが、サイズそのままで使っている場合もないこともない。
つまりグラウンドの大きさがまちまちなので、ホームランの基準が一定ではない。したがって、狭いグラウンドの50本と、広いグラウンドの30本を比較して考えていいのか。
ホームランの数が多いほど長打力が優れているとは一概に言えないのが、「通算本塁打」の実情なのである。
しかし、いいことだと思う。
何ごとも、数字で自分を知っておくことは、いいことだ。人と数を競うことも励みになるし、数が増えていくことも励みになる。
ただし“数字”を励みにするのなら、野球にはホームラン以外にも、もっと気にしてほしい数がありはしないか?