マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
清宮幸太郎の通算100号達成に思う。
もっと大事な数字があるだろう……。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byHideki Sugiyama
posted2017/06/18 09:00
甲子園と、高校のグラウンド。同じ1本のホームランでも飛距離、そして人々に与えるインパクトは大きく違う。
ちなみに私の高校通算は、残念ながら0本である。
ウソだと思ったら、試してみたらよい。野球って面白い。その実感が意外に早く、具体的な感覚で得られると思う。
ちなみに私の高校通算は、残念ながら0本である。もっと早く、わが高校球児時代に気がついていれば……と今では思う。
私も当時は、打率と本塁打ばかり追いかけていたものだ。
1973年、高校野球の最後の夏を終えた私たちの代は、高校野球が木製バットを使っていた最後の代である。今のように、金属バットにガツンとぶつければ入ってしまうのと違い、ホームランはそんな簡単なものではなかった。
それでも、幻のホームランは3本ほどあった。
相手センターが、フェンスの向こうにグラブの左手を差し出して捕ってしまった1本。
間違いなくレフトボールを巻いたライナーだったのに、1人しかいない球審があろうことか、相手のレフトに打球のゆくえを訊いて、ファールにされた痛恨の誤審が1本。
あの時あの瞬間、ジャストミートの感触……。
3本目がいちばん記憶に鮮やかだ。
捕手のサインが一塁ベースコーチから丸見えで、“暗号”で球種が分かった。ドンピシャのタイミングのジャストミートが、バックスクリーン目がけてハーフライナーで飛んでいった。
入れ、入れー!
叫びながら打球をゆくえを見ていて、走るのを忘れた。際どくフェンス直撃になって、はね返ってきたボールをセンターが素早く二塁に返球。
センターオーバーのシングルヒットに、腰が抜けるほど監督さんに怒られて、しかし、あの時あの瞬間のジャストミートの感触。
40数年を経た今だって、この手の平にはっきりと覚えている。