ぶら野球BACK NUMBER
野球の応援は“究極の片想い”か。
仙台の地で巨人と牛たんで泣く。
text by
中溝康隆Yasutaka Nakamizo
photograph byYasutaka Nakamizo
posted2017/06/15 11:00
「絶品 銀次の海鮮箱」「藤田一也の牛めし弁当」「シマシマ弁当II」……スタジアムには選手とコラボしたお弁当が並ぶ。
プロ野球ファンとは究極の片想いである。
8回終了後、ひと足お先に球場を出ると歩いてホテルまで戻ることにした。
明後日は連続二桁奪三振記録が懸かる相手エース則本昂大が先発予定で勝機は薄い。勝負は第2戦。もし、明日も落とすようなことがあれば巨人の連敗はしばらく続くかもしれないな。夜の宮城野通りをひとりぶらぶら歩きながら、そう思った。
……って、俺はなんでこんなにもヘコんでいるのだろう。いくつもの原稿の締切を後ろ倒しにしてまで仙台にやって来て、誰に頼まれたわけでもないのに巨人を応援して、連敗したとヘコんでいる。
誠意っていったい何かね? みたいなひとり観戦旅行。
要は勝手に好きになって、勝手に目の前の結果に一喜一憂しているわけだ。しかも俺がプレーするわけでもないのに。すべては自分の力じゃどうにもならないこの感じ。それでも選手たちを少しでも近くで感じたいとみんなワクワクしながら球場へ足を運ぶ。もしかしたらプロ野球、というかプロスポーツを応援するという行為は“究極の片想い”なのではないだろうか。
ほとんどおっさんに片足突っ込みかけた30男でも、球場に行けば10代の頃のような無力さと切なさを疑似体験できてしまう。
夜の闇に輝いていた「東北福祉大学」のネオン文字。
そんなことを考えながら敗北を噛みしめ歩いていたら、ふと巨大な建物が目に入った。
緑色のネオン文字で「東北福祉大学」と光っている。
えっ? マジで?
大魔神・佐々木主浩や鉄人・金本知憲を輩出したあの東北福祉大学が目の前にあるぞ。ちなみに翌日、コンビニでスポーツ新聞各紙を買うと日刊スポーツでは「仙台6大学野球 東北福祉大が春季リーグで2季ぶり68度目のV」がカラーページで報じられ、サンケイスポーツでも「仙六列伝 東北福祉大編」というコラムで和田一浩が特集されていた。
おぉ自分は仙台にいるんだなと実感できた瞬間だ。