ぶら野球BACK NUMBER
野球の応援は“究極の片想い”か。
仙台の地で巨人と牛たんで泣く。
text by
中溝康隆Yasutaka Nakamizo
photograph byYasutaka Nakamizo
posted2017/06/15 11:00
「絶品 銀次の海鮮箱」「藤田一也の牛めし弁当」「シマシマ弁当II」……スタジアムには選手とコラボしたお弁当が並ぶ。
敗北の痛みを忘れさせてくれる絶品牛たんとの再会。
翌31日、午前中に起きてどうしても行きたい場所があった。
4年前の日本シリーズ観戦で巨人敗北に打ちひしがれた直後、少しでもそのショックを和らげようと、タクシー運転手のおっちゃんにオススメの牛たん屋を聞いた。すると教えてもらったのが「味太助」本店である。
ホテルにある牛たん焼きお店マップを確認すると、真っ先に「仙台牛たん発祥の店として有名」と紹介されている老舗店。これは間違いなさそうだ。そして、新幹線の時間を遅らせてまでも立ち寄った「味太助」の牛たんの美味さに、しばし現実を忘れることができたのだった。
今回もあの店に行こう。ホテルからは約2キロの道のり。東京では間違いなく地下鉄に乗っている距離、それが旅先だとなぜか無性に自分の足で歩きたくなるから不思議だ。いわゆるひとつのツーリスト・ハイである。ペットボトルの水だけ片手に、躊躇なく徒歩で向かうことにした。
「味太郎」の牛たんを食べるために仙台に来た!?
街の風景を眺めながら30分近くかけて辿り着いたのは見覚えのある暖簾。懐かしい。昼前だったので並ぶことなくすぐ入れて、さっそく牛たん3枚定食、1人前1700円を注文する。
うめぇ……。
一瞬、自分は野球ではなく、これを食べるためにここまで来たのかもしれないと錯覚するほど、4年ぶりの牛たんは文句なしに美味かった。
いつの時代も人は美味いものを食べると、身体的にも精神的にも回復する。だから、今の巨人ナインも高級焼き肉店で決起集会とかやればいいのに……じゃなくて、とにかく日本シリーズ第7戦で負けたことを考えたら、5連敗くらいなんてことはない。あの時のショックに比べたら全然マシだ。俺は牛たんと麦飯をかきこみ、ホテルに早歩きで戻り原稿を1本書いて、ひとっ風呂浴びてから、球場へ向かった。