“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
大学で第3GK、U-20正GKが感じた隙。
小島亨介に待つW杯後のギャップ。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byAFLO
posted2017/06/07 08:00
ウルグアイやイタリア、ベネズエラなどとの真剣勝負はW杯だからこそ経験できるもの。小島は大学サッカーの舞台でその感覚を忘れずプレーできるか。
「世界で感じた隙を、早稲田で埋めていかないと」
もちろん、今大会で喫した6失点という現実はしっかりと胸に刻まないといけない。それと同時に、W杯で戦ったことで得た自信を失ってもいけない。
「自分の守備範囲が世界の中でどれくらいのものなのかを知りたくて、ここに来た。世界のレベルは本当に高かったし、みんな守備範囲が広かった。特にベネズエラのGKは身長が180cmにも満たないのに、セービングも1対1も守備範囲も抜群だった。その点、通用する部分も感じたけど、自分はまだまだ隙がある。その隙を早稲田で埋めていかないといけない」
世界基準を知った彼は、今年こそ早稲田大で守護神の座を掴めそうだ。しかし、彼には新たな“怒りの要素”が加わっている。昨年、チームは屈辱の2部降格を味わい、今年は関東大学リーグ2部での戦いを強いられているのだ。
「2部と言う舞台は雰囲気も少し緩かったりしますが、その中でいかに自分と戦えるかが大事になって来ると思っています。より自分への怒りを明確にして、真剣にぶつけることで、緊張感のある雰囲気を練習から作っていかないといけないですし、その中で自分が常に高い基準を追求して打ち込めるかが重要になって来ると思う」
W杯で戦った基準を絶対に忘れないように。
戦う相手が世界から、関東大学リーグ2部へ、大きくカテゴリーが変わってしまうのは事実である。しかしそこで気を抜いてしまえば、得難い財産と、これまでの積み重ねがフイになってしまう。強烈な危機感を抱く彼は、より怒りの炎を燃え上がらせているのだ。
「この基準を絶対に忘れてはいけない。大変な作業であることは分かっています。だからこそ、毎日の練習を人生最後の練習くらいの気持ちでやっていけば、その先、“いい景色”を見られると思うので、そこを考えてやっていきたいです」
自分の将来の可能性を広げるのも、狭めるのもすべて自分次第。これからも周りのせいにせず、自らに責任感を課しながら、小島は早稲田大のゴールマウスの前に立ち続ける。