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U-20のGK山口瑠伊って、誰?
日仏での文武両道サッカー人生。
posted2017/05/21 08:00
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph by
AFLO
5月21日にU-20W杯の初戦・南アフリカ戦を迎えるU-20日本代表。
選ばれし21名のメンバーは多士済々と言えるが、1人だけ「この選手、誰?」と思う人物がいる。
GK山口瑠伊。
フルネームは山口・ジュリアン・タカジ・瑠伊。
大半がJリーグに所属するメンバーの中で、唯一海外のクラブでプレーする18歳だ。
彼はフランスのトップリーグである「リーグアン」に所属するFCロリアンのU-19チームでプレーし、フランス人の父と日本人の母を持つ。186cmの高さを活かしたハイボールの処理、セービングセンス、的確なコーチングが魅力の彼は、フィジカルも強く、1対1や強烈なシュートに対しても、しっかりと上半身で“面を作って”対応できる、スキルとパワーを兼ね備えたGKである。
実は、この「21人中、一番知られていない選手」は、かなりの切れ者であり、ポテンシャルを秘めた男なのだ。
フランス人の父は柔道と居合道の達人だった。
フランス・パリで生まれた彼は、生後6カ月で母親の母国である日本にやって来た。東京で生活していた頃は、小学校から日本の一般的な学校ではなく「リセ・フランコ・ジャポネ」というフランス政府が運営するインターナショナルスクールに通っていた。在学中には、サッカーと同時に柔道も始めたという。
そもそも柔道は父親の影響だった。フランス人の父は大の「親日家」。フランスでは柔道に打ち込み、居合いの達人でもあった。柔道5段の実力を持ち、日本で柔道をするために、23歳のときに勤めていたフランスの会社で志願して日本支社にやってきたほどだった。そこで日本人の母と知り合い、長女と瑠伊が誕生した。
サッカーと柔道。その両方に真剣に取り組んでいた瑠伊だったが、小5のとき柔道関係者から「君はオリンピックに出られるような力を持っている。だから柔道一本でやっていった方が良い」と本格的な打診を受けた。母にもその話は行ったが、「決めるのは本人なので、どちらに絞るかの判断は任せました」と、息子の決断を待った。