JリーグPRESSBACK NUMBER
ACLベスト8は浦和の“宿題”だった。
延長の戦い方と、引きすぎない勇気。
posted2017/06/01 11:25
text by
轡田哲朗Tetsuro Kutsuwada
photograph by
AFLO
あと5分、このスコアを維持すれば――。
浦和レッズは、1年前にも全く同じ状況を経験していた。AFCチャンピオンズリーグ(ACL)の決勝トーナメント1回戦セカンドレグ、昨年5月のFCソウル戦でも、延長後半の残り5分で李忠成がゴールして1点をリード。しかし、ラストプレーと思われた相手の攻撃がゴールにつながった。そしてPK戦の末に、敗れて大会を去った。
そして1年後、ベスト8がかかった5月31日の済州ユナイテッド戦でも、延長後半9分に森脇良太がこの日のスコアを3-0、通算で勝ち越しとなるゴールを奪った。ホームとアウェーの違い、相手が10人になっていたこと、そうした要素があるにせよ、浦和に1年前に乗り越えられなかったものを打破する機会が再び巡ってきた。昨年と何が違ったのか、選手たちの言葉から浮かび上がるものがあった。
現実的に見える配置が、昨年は裏目に出た。
「前回はプレッシャーに行けなくなって、ズラ(ズラタン)が下がって放り込まれすぎてセカンドボールを拾われたから」
柏木陽介は、昨年の戦いをこう振り返った。残り時間が少なくなれば、1点を追うチームはロングボールを放り込んでパワープレーに出るのが常だ。だからこそ、フィールドプレーヤーの中で最長身、186cmのズラタンを最終ライン近くに配置した。
何度となく放り込まれるボールを跳ね返すための選手配置は、ある意味では現実的で理に適っているように思えた。だが結果は、防戦一方になったラスト5分を持ちこたえられなかった。
この済州戦も、相手は194cmの長身FWメンディを投入していた。今年もピッチにはズラタンが残っていたため、マーカー役としてポジションを下げることも可能だったが、そうはしなかった。ボール支配を明け渡すことなく、あくまでも敵陣でゲームを進めることを選んだのだ。
柏木は「相手が1人少ないこともあって、良いところでボールをキープできたのが大きかった」と話し、ズラタンも「頭を使って最後までプレーできたと思う。慌てることなくね」と作戦の成功を喜んだ。