話が終わったらボールを蹴ろうBACK NUMBER
風間サッカーの代名詞は何が目的?
名古屋のパスワークに潜む違和感。
posted2017/06/02 08:00
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph by
J.LEAGUE PHOTOS
J2の首位に立ち、J1昇格争いをリードする名古屋グランパス。
下馬評通り圧倒的な強さを見せつけての快走かと思いきや、試合を見ていると「現実と理想」の狭間で揺れている印象を受ける。
今シーズンから指揮を執る風間八宏監督が標榜するのは、つなぐサッカー。そのスタイル完成を目指している分、選手が「つなぎ」を意識してプレーしているのはよく分かる。だが選手のプレーを見ていると、つなぎの意識が強すぎる感がある。“つなぎ自体が目的”のように見えてしまうのだ。
横浜FC戦(第16節)では、その症状が出ていた。
高さのあるシモビッチがいても、足元のパスばかり。
この日は長身FWシモビッチが最前線に構えた。しかし、クロスを入れてボックスの中で競り合うシーンはほとんどなかった。彼が前にいるのであれば、彼の高さを活かしてクロスを入れ、ボックスでの競り合いからこぼれたボールを狙う方が横浜FCにとっては脅威だったはずなのに、である。
逆に、シモビッチの足元にパスを入れようとしてもタイミングが合わなかったり、ボールを奪われるシーンもあった。つまり地上戦に固執し、彼の強みをほとんど活かすことができていなかった。
相手としてみれば空中戦を仕掛けない分だけ、目線が変わらない。守っていても非常にラクだったはずだ。実際に試合後、横浜FCの小宮山尊信を含めた選手数名は「名古屋は攻撃についてそれほど恐さや迫力がなかった」と評していた。
迫力や恐さがないのは、アイデアやポジティブな姿勢が欠けているからだろう。
特に若い選手はつなぐことを監督に要求されているので、そのプレーを優先的に考えてしまう。それが“ミスをしたくない”という気持ちとなって消極的なプレーが増え、トライするようなプレーができていない。