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ACLベスト8は浦和の“宿題”だった。
延長の戦い方と、引きすぎない勇気。
text by
轡田哲朗Tetsuro Kutsuwada
photograph byAFLO
posted2017/06/01 11:25
0-2でファーストレグを終えた時、浦和のファンは「またか」と思ったことだろう。しかし、今年の彼らはひと味違うのだ。
柏木が考えた、延長を含めたゲームコントロール。
だからこそ、後半36分に相手が退場者を出してからの時間帯で、柏木は考え方を変化させた。ブロックを作って構え、ワンチャンスに懸ける相手にむざむざとカウンターの機会を与えまいとした。
「もちろん90分で決めたかったのが正直なところだけど、こっちが前掛かりになってカウンター1本で失点したら、というのが頭にあった。アウェーで、(相手と)同数なのに失点したのも頭にあったし、延長で1点取れたらいいと。80分くらいのところから、トータル残り40分という考え方で僕はプレーしていたし、よくコントロールできたと思う」
延長戦に入れば、仮にセットプレーやカウンターなどの少ないピンチで1失点したとしても、同点ならばPK戦、2点を奪えばそのまま勝利できる。しかも、相手が10人になったままプレーする権利を得た上でだ。
昨年は不利に働いたルールが、今回は自分たちの味方になる。逆の立場を体験していたからこそ、必要以上に攻撃的な姿勢を取らずにゲームを進めることができた。
西川「今日負けていれば、昨年と一緒だった」
昨年のソウルでの敗戦は、多くの選手の心に痛みと傷跡を残した。意気消沈といった様子で試合後のミックスゾーンに姿を現した選手たちのことは、今でも忘れられない。
その後のリーグ戦でも、その敗戦を引きずるかのように1分3敗と4戦連続で勝利を得られず、第1ステージ優勝の可能性を消滅させてしまった。だからこそ、このゲームに対する浦和の選手たちの気持ちは強いものがあった。
前日に実施されたゲーム形式の練習でも、西川は公式戦の試合中さながらに味方のゴールを喜び、守備陣の緩慢なプレーに怒声を発した。アウェーで敗れてからの1週間を振り返り、チーム全体で作り上げた一体感への手応えを話している。
「いつもと違うと感じたのは、試合に入る前の掛け声ですね。全員が声を出して『絶対にやるぞ、やってやるんだ』と鼓舞しながら、自分たちで雰囲気を作っていけたので。今日負けていれば、昨年と一緒だった。チームとしても、もうひとつ違う世界を見たいと思って挑むことができたし、ひとつのキッカケにしていきたいですよね」