プロ野球亭日乗BACK NUMBER
再び訪れたMLB移籍の“黒船”。
NPBは不平等条約を結ぶな!
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNanae Suzuki
posted2017/05/18 07:00
WBC欠場、シーズン序盤での故障と厳しい時期が続いている大谷。だが、その選手としての器は海を越え、世界的評価が定まっている。
ポスティング制度ができた経緯を考えると……。
もともとポスティング制度とは、野茂英雄(近鉄からロサンゼルス・ドジャースに移籍)や伊良部秀輝(ロッテからニューヨーク・ヤンキースに移籍)らの海外移籍を巡るトラブルを発端に、海外FA権のない選手の移籍に関するルールを米国側が求めて作られたものだった。MLB球団には日本選手を1年でも早く獲得できることに利益がある。
一方、日本視点で見れば、選手はメジャー移籍という夢(と多額な年俸)を実現し、球団は先行投資してきた選手と引き換えに金銭的補償を得るというメリットで成り立っている。
この三角形のバランスが取れて初めて、ポスティング制度は成り立つものなのである。
移籍金を大幅に減額となればメジャーは選手を安く獲得し、選手も夢を実現できるかもしれない。ただ、もう1つの当事者である日本球団のメリットはほぼ消失することになる。
三角形のバランスが崩れるならば、制度そのものの意味がなくなる。
だとすれば新しい移籍の制度を模索すべきである。
球団主導による日米間のトレードを認めると面白い。
日米間のトレードを認め、制度化するのも1つのアイデアだろう。
そもそも日米双方の選手契約で、選手の移籍は球団が主導権を持つトレードか、あるいは正当に移籍の権利を得るFAに依ることがベースにある。だとすればポスティングより、日米の球団間による金銭を含めたトレードができる制度があるべきだし、新たにそういう制度を模索する決断があってもいいはずだ。
現行では日米間のトレード規定はないが、新たに制度を作るなら、あくまで当該球団同士で条件(交換選手の譲渡も含めて)の交渉を優先し、トレードマネーなどに特別な制限は設けるべきではない。
その代わり日本での選手契約を引き継ぎ、選手はメジャー移籍後も1年間は日本での契約条件でプレーする。そうして契約が切れた翌年オフに、新たにメジャー契約を結び直す形にする。