マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
「不動のスタメン捕手」不在の時代。
投手が配球の主導権を握るチャンス?
posted2017/05/19 11:00
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
Kyodo News
プロ野球・打撃30傑。
そこに捕手がいない……。
そう思って探してみたが、セ・リーグで、わずかに中村悠平(ヤクルト)が.270で20位(5月14日現在)にいるだけで、ほかに34位に梅野隆太郎(阪神)、35位に小林誠司(巨人)が顔を出しているが、この2人は規定打席ぎりぎりで、堂々のレギュラーとは言いにくい。
さらに、パ・リーグに至っては、打撃30傑に捕手が誰も名を連ねておらず、規定打席がクリアできそうな予備軍にしたって、田村龍弘(千葉ロッテ)ただ1人という状態なのは、調べてみて、あらためて驚いたものだ。
情けない! とか、けしからん! とか、そういう話ではない。
それが、今のプロ野球の“現況”なのだ。
レギュラーマスクがドーンと居座って……という時代。
そういう時代なのだろう。
長くプロ野球を見ている者の当たりまえの感覚として、プロ野球の捕手はチームに1人。誰でも知っているレギュラーマスクがドーンと居座って、後進の追従を許さない。そんな“典型”というものがある。
「名捕手」という大看板が次々と現われて、チームの黄金時代を陰で支える。
私の記憶の範囲でいえば、それが野村克也(南海)、森昌彦(巨人)であり、大矢明彦(ヤクルト)、達川光男(広島)であり、伊東勤(西武)、古田敦也(ヤクルト)であり、矢野輝弘(阪神)、谷繁元信(横浜)、阿部慎之助(巨人)なのであろう。
その時々で強いチームには、必ずといってよいほど、その強さを象徴するようなレギュラーマスクの存在があった。
しかし、“今”強い楽天、ソフトバンク、阪神、広島にはそうした捕手はいない。わずかに、嶋基宏(楽天)、石原慶幸(広島)がその“匂い”を発し、特に嶋捕手にはぜひそうあってほしいと熱く願うのだが、今季は腰の故障もあって、実情が伴っていないのが残念でならない。