オフサイド・トリップBACK NUMBER
香川真司復活の要因をリティが分析。
「彼は『計算しやすい』選手なのだ」
text by
田邊雅之Masayuki Tanabe
photograph byAFLO
posted2017/05/05 11:30
シーズン終了が近づくと、選手には去就の憶測報道が飛ぶ。しかし今の香川はドルトムントでプレーする喜びをかみしめている最中かもしれない。
香川は相手との相性も重要な選手である。
――トゥヘル監督と香川の間に起きた化学反応が、香川とチームメイトの間にも起きたというのは興味深い指摘です。
「ただし今回のような復活劇には、実はもっと細かな要因も影響している。サッカーの試合は、味方のチームだけではできない。相手チームが必ず存在するからだ。
いかに監督やチームメイトと相互理解が深まり、自分の持ち味を活かす方法が把握できるようになったとしても、対戦相手との噛み合わせが悪ければ、真価を発揮するのは難しい。相手が中盤でも猛烈にプレッシャーをかけ、スペースや前を向いてプレーする時間をまったく与えてくれないようなタイプならば、ゲームメイクに苦労していた可能性もある。CLのベンフィカ戦などで重用されなかったのは、このような判断も作用しているだろう。
もちろんヘルタ戦に関しても、安易な議論は避けなければならない。ブンデスリーガでもプレッシングの意識は高まっているし、ヘルタはフィジカルなプレーと、ハードワークが売り物のチームだ。その意味では推測の域を出ないが、ヘルタの守備陣が、香川のような選手を苦手にしていた可能性はあると思う」
ロジックだけでは説明できない要素も。
――対戦チームとの相性も、香川にとって追い風になったと。とはいえ、ヘルタ戦の前は出場機会に恵まれていなかったはずです。いかに監督やチームメイトとの相互理解が深まり、香川自身がひたむきな努力を重ねていたとしても、あそこまで一気に変われるものなのでしょうか?
「その質問は正しい。サッカーの試合には、ロジックだけでは説明できない要素も影響する。
たとえば戦術理解が完璧で、コンディションも最高、対戦相手との噛み合わせも理想的だったとする。そして試合では当然のように、ベストを尽くしたとしよう。それでも実際には、どうしても結果が出せないケースが必ず生まれてしまう。逆もまた然りで、必ずしも調子が良くはなくとも、なぜかいいプレーができる場合もある。予測不可能なケースが起きることは、現役時代の自分の経験からも断言できる」