話が終わったらボールを蹴ろうBACK NUMBER
J1通算20000点目を決めた地味な男。
清水・金子翔太、3年前と不変の姿勢。
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2017/04/24 17:30
公式サイトでも「たくさん走ります!!」と書いている金子翔太。鄭大世の周囲を走り回る動きが、清水の攻撃を捕まえにくいものにしている。
昔も今も、まずは守備から。
グループステージ初戦で中国に敗れ、2戦目でベトナムに勝利し、グループステージを突破するには3戦目の韓国戦に勝たなければならなかった。中国戦で不甲斐ないプレーをして2戦目を外された金子は、韓国戦ではスタメンに復帰。決勝点となる2点目の起点になるなど、初戦の消極的なプレーから一転してアグレッシブなプレーを見せて勝利(2-1)に貢献し、グループリーグ突破を果たした。
その試合後、金子は今回のメモリアルゴールを決めた時と同じ言葉を発したのだ。
「次の北朝鮮戦(ベスト8)も、まず足がつるぐらいまで全力で守備をします。攻撃はまぁ起点になりながらドリブルしたり、拓実君にクロスを上げたり、韓国戦でやれたことを出せたらいいかなと思います」
昔も今も、まずは守備から――。
プロを目指すうえで、武器にした運動量。
攻撃的な選手なのに、と思うだろうが、その強い意識は金子の育成環境によるところが大きい。彼が育ったJFAアカデミー福島は、全国からプロを目指す質が高い選手が集う場所だ。金子は攻撃のセンスはあったが、ずば抜けたスピードがあるわけではなく、圧倒的なテクニックがあるわけでもなかった。プロを目指すためには、プラスアルファが必要だった。
その時に自分の武器にしたのが運動量であり、守備だった。
前線からボールを追い、プレッシャーをかけていく。そこまでやらなくても、というところまで執拗にボールを追うことで、他選手との「違い」を生んだ。前の選手がこれだけ守備をしてくれると、後ろの選手たちは助かる。自然とチーム内での評価は上がっていった。ピッチ上で汗をかくのを惜しまない選手として、生きていく術と自分の居場所を見つけたのだ。