話が終わったらボールを蹴ろうBACK NUMBER
J1通算20000点目を決めた地味な男。
清水・金子翔太、3年前と不変の姿勢。
posted2017/04/24 17:30
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph by
J.LEAGUE PHOTOS
20000ゴールを決めた瞬間、金子翔太は左手の薬指に軽くキスをした。
3月に入籍した4歳年上の彼女への愛情と感謝のしるしだった。
「恥ずかしいから、もうしないです」
金子は表情を崩して、そう笑った。
メモリアルゴールは、狙い通りのカウンターから生まれた。
J1第8節川崎戦。前半14分、鎌田翔雅がボールを奪うとそのまま前に運び、右サイドに開いていた鄭大世にパス。鎌田はそのままスピードを緩めずニアサイドに突っ込んでいった。
鄭大世から糸を引くようなパスが出たが鎌田は触れず、ファーサイドに詰めていた金子が左足で押しこんだ。「流れてくるかなぁと思いつつ不意に来たので焦った」と放ったシュートは、GKを弾いてゴールネットを揺らした。
「2トップの相方のテセさんも狙っているのはわかっていたんですけど、僕もしたたかに狙っていました」
FWとは思えない、ボランチのようなコメント。
試合後、大勢の報道陣に囲まれて笑みがこぼれる。
「ゴールは、いつも通り守備から入って、しっかり守れているところからのカウンターで決めることができてよかったです。でもゴール以外のところ、守備でも目立ちたいですね。今日の試合も1失点目は僕が寄せていたらなっていうのがありますし、その時間帯はしんどい時間だったので、もっと自分からプレッシャーをかけられたらというのがありました」
FWとは思えない、まるでボランチの選手のようなコメントだが、金子の言葉を聞いて3年前と意識が変わっていないなぁと感心した。
金子のプレーを初めて見たのは2014年、AFC U-19選手権ミャンマーの時だった。
U-19日本代表として、U-20ワールドカップの出場権をかけて戦った。チームにはエースの南野拓実がおり、今やすっかりガンバ大阪のレギュラーに定着した井手口陽介や浦和レッズの関根貴大が中心でプレーし、金子も主力のひとりだった。