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ミランを買収した中国資本は大丈夫?
新時代を祝う人、不信感を表す人。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2017/04/19 17:00
李勇鴻がアジアから選手を獲得するとしたら、マーケティングの面でも中国選手の可能性が高い。本田圭佑の去就は果たして。
中国での放送のため、史上初のミラノダービー昼開催。
新オーナー体制での初試合となった15日のミラノダービーは、時差のあるアジアのプライムタイムに合わせて史上初のランチタイム開催となった。
前半で2点リードしたインテルに土壇場の97分でミランが追いつく劇的な幕切れとなった。
久しぶりに先発フル出場したインテルDF長友佑都は試合後の憔悴を隠せず、終始ベンチに座ったままだったミランMF本田圭佑は、最後になるかもしれないダービーで何の重さもない影のようだった。
試合後、ミランのロッカールームでは半裸の選手たちが馬鹿騒ぎに興じた。彼らの輪に李新会長とファッソーネCEOも加わり、熱狂に酔いしれた。新オーナーは、ダービーの持つ意味合いを感じ取ったにちがいない。
超満員だったサン・シーロのハーフタイムには、中華レストランの宣伝文句“ALL YOU CAN EAT(食べ放題)”と、箸で人民元札を食べるイラストを描いた横断幕が掲げられた。慣例だったダービーのナイトマッチ開催の醍醐味を、多額の放映権料と引き換えにしたリーグを皮肉ったものだが、“チャイニーズ・ダービー”は、これから訪れる新時代への期待感に溢れていた。
「ミランとインテル双方が最後まで闘った。この試合にはアジアに向けて相当のプロモーション効果があったはずだ。面白い試合を見せられた。新経営陣にとっても良い第一歩になったのではないかと思う」(モンテッラ)
10年前、ミランとインテルは黄金時代だった。
冒頭に記したテーマ展には、イタリアにおける中国移民人口統計の推移を示したパネルがあった。
1980年代初頭まで1000人以下に留まっていた彼らの数は、その後の10年間で30倍近くになり、21世紀に入っても爆発的増加は止まらず2年前には27万人を越えた。
異国でタフに生き延び、足場を作り、のし上がっていく中国人のバイタリティには、同じ外国人の立場から考えさせられることも多い。
10年前の今頃、ミランはCL準々決勝でバイエルンを破り、マンチェスター・Uとの準決勝を控えていた。その後、彼らは7度目の欧州制覇を成し遂げ、インテルはスクデットを連覇し黄金時代を謳歌していた。
その頃、ミランとインテルが2つとも中国人所有のクラブになると誰が想像できただろうか。2027年のミランはどこにいるのか。
“チャイニーズ・ミラン”の時代がいよいよ始まった。