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ミランを買収した中国資本は大丈夫?
新時代を祝う人、不信感を表す人。
posted2017/04/19 17:00
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph by
AFLO
先日行われたミラノダービーの前に、サン・シーロからは少し離れているが、ミラノ文化博物館に立ち寄った。
お目当ては「Chinamen, Un Secolo di cinesi a Milano」(ミラノにおける中国人の一世紀)と銘打ったテーマ展だった。
中華移民のはじめは、路上での細々とした偽真珠の行商や服飾製品の内職だったらしい。1900年代初頭、ACミランはすでに創設され、クラブ内の一派がインテルを創設しようとしていた頃のことだ。それから100年、5世代にわたって彼らはイタリア中に根を張ってきた。
2017年4月14日、中華民族のイタリア移民史に新たな成功譚が書き加えられた。
記された名は、第23代ACミラン会長に就任した広東省出身の実業家、李勇鴻(リ・ヨンホン)である。
ACミランは新たな時代を迎えた。
中国政府の意向にも翻弄された買収劇。
名門ミランの売却は一筋縄では行かなかった。
当初、ベルルスコーニ家の持株会社「フィニンベスト」社が保有していたミラン株式の99.93%を中国投資グループが取得するという話で、買収の2016年内完了が目指されていた。
しかし、中国政府による人民元の国外流出制限が昨秋以降一段と強まり、投資グループの投資家たちが次々に離脱。旗振り役だった李勇鴻だけが踏みとどまり、買収契約存続のための保証金2億5300万ユーロを自腹で払いながら、資金調達に奔走した。
3月上旬に目指していた“クロージング(クラブ株譲渡完了手続き)”が再び未成立に終わり、買収は危機的状況に陥った。だが、米国のヘッジファンド「エリオット」社からの緊急融資を取り付けることに成功した李は、株管理会社「ロッソネーリ・スポーツ・インベストメント」社を設立し、13日のクロージングに漕ぎ着けたのだった。