フランス・フットボール通信BACK NUMBER
アジア杯をTV観戦したら公開処刑。
イスラム国がサッカーを禁じた日。
posted2017/03/23 17:00
text by
ジェレミー・ベルリオーJeremie Berlioux
photograph by
Sebastian Castelier
3月14日発売の『フランス・フットボール』誌では、ジェレミー・ベルリオー記者が、イスラム国に占拠されていた地域のサッカーがどうであったかをレポートしている。
非寛容で排他的な原理主義が、なぜサッカーを目の敵にしなければならなかったのか。地域に住む人々はそれをどう受け止め、どう対処したのか。明かされるのは驚くべき事実の数々である。
スポーツやアスリートを主人公にして、社会現象に深く切り込んでいく――。
このレポートもそうであるし、東日本大震災からわずか2カ月後に『レキップ・マガジン』誌がおこなった日本の著名アスリートたち(白鵬、北島康介、小笠原満男、岩隈久志、浅田真央、阿部香菜)の震災についての連続インタビューなど、フランスのスポーツメディアは日本のメディアにはない視点、切り口でスポーツと社会、人間を捉えようとする。
読者の皆さんには、内容だけでなくその点も感じて欲しい。
監修:田村修一
クラシコをテレビ観戦したら「鞭打ち80回」の刑を。
イスラム国に反逆するイスラム教徒たちの避難場所となっていたイラクのシリア国境の街ラビア。この地では、イスラム国による占領下で長らくサッカーが禁止されていた。だが、その間も抵抗運動は組織され、人びとは身の危険を感じながらも自分たちのスポーツを実践していたのだった。
80回の鞭打ち刑。
それがシリアとイラクにおけるイスラム国(ダーイシュ)の支配地域で、バルセロナ対レアル・マドリーのクラシコをテレビで見た人々に対する処罰だった。
この反動的な原理主義者たちがつけたもっともらしい理由は、サッカーこそは「西洋の退廃的な産物」に他ならないから、というものだった。
シリアとイラクの一部地域を2014年に支配して以来、イスラム国はサッカーに対しても戦争を布告した。サッカーは、その地域に住む人々に恐怖政治を敷くための、格好の攻撃目標となっていた。