フランス・フットボール通信BACK NUMBER
ベンゲルが、こんなに嫌われてる!?
辞任すべき理由を全部並べてみた。
text by
ティエリー・マルシャンThierry Marchand
photograph byFranck Faugere
posted2017/03/16 21:00
契約延長がなかなか決まらない中、今季残りを戦い続けるベンゲル。ここからの巻き返しなるか?
理由その2:監督である以上に金儲け主義者であるから。
去就の決断はたしかに難しい。
しばしばそれは喪服に身を包んでの別離となる。
ましてやベンゲルは67歳。契約の最後のシーズンである。ただでさえ不安はつきまとう。
アーセナルでの日々を振り返ったときに、彼の能力の証として引き合いに出されるのは、特定の勝利よりも19年連続でチャンピオンズリーグ出場を続けていることである。だが、過去は過去でしかない。過去の業績で今日の欠落を埋めることはできない。
'96年秋に監督に就任したベンゲルは、旧態依然としたスタイルのまま凋落の一途をたどっていたアーセナルを再建し、プレミアリーグに最新のマネジメントを持ち込んだ改革者であった。彼はクラブを最新の形態に刷新し、継続性と安定感を与えて、その結果として栄光に導いた。未来永劫において、彼がクラブのレジェンドであり続けるのは間違いない。
目的はチームの強化ではなく、株主たちの利益に!?
20年前には伝統的で保守的なイングランドのサッカーに敢然と挑戦したベンゲルが、今はただ英国の寒さに震えるだけの平凡な人間に成り下がってしまった。
すでに彼は自分の時間を使い尽した。今日の彼は、単に過去の遺産を管理しているに過ぎない。彼が実践してきたことはまだ時代遅れとは言えないにせよ、すでに一般化されてイングランド全体に取り入れられている。
そんな状況で、彼は自分の砦を頑なに守り続けている。インターネットの存在を無視して、今でもミニテル('90年代に世界最先端といわれた電話回線を使ったビデオ通信システム)に全幅の信頼を置いているかのごとくに。
ベンゲルは世界への扉を開いた。フランスにとってもまたイングランドにとっても、それは画期的なことであった。だが、その後の彼は、次第に視野が狭まり頑固になっていった。そしてアーセナルというクラブが、まるで自分の所有物であるかのように振る舞っている。実際にはクラブを代表する著名な人物のひとりであるにすぎないのに。
そして今の彼は、監督というよりも金銭欲にとり憑かれた功利主義者だ。
目的はチームの強化ではなく、いかに株主たちの利益を増やすか。たとえトロフィーは獲得できなくとも、いかに出費を少なくして利益を維持し続けるか。チャンピオンズリーグのチケットは、その唯一の例外といえる。