プロ野球亭日乗BACK NUMBER
対応する打撃と、決めにいく打撃。
日本の4番・筒香嘉智の2つの顔。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNanae Suzuki
posted2017/03/15 11:50
試合を重ねるごとに「日本代表の4番」の風格が増している筒香。コメントはいつも「チームが勝つことが一番」である。
筒香が放った2本の適時打が、いかに重要だったか。
さらに再び2点のリードを許して迎えた5回には1死二、三塁から青木の内野ゴロで1点を返したものの、再びアウトカウントは2つ。
追いつくには安打しかない場面だったが、筒香はここでも再び中前に適時打を放った。
「走者が三塁だったので大きいのを狙わずに、欲を出さないように丁寧に、と心がけた」
試合後の筒香はいつも通りに淡々とした表情で2本の適時打を振り返ったが、指揮官が語っていたように、この2本の適時打で試合の流れを決して相手に渡し切らなかったことが、隠れた勝因といってもいい。
ベンチが、ファンが「何とかして欲しい」と思う場面で、何とかする。
まさに筒香が「4番」の仕事を見せた2本のタイムリーだったのである。
これから対戦する投手はどんどんレベルが上がる!
少し大雑把な言い方になるが、メジャー級の投手を相手にするWBCでは、2つのタイプの打者が必要だ。
1つはどんな局面でもなんとかできる打者で、もう1つは相手の失投を逃さずに決めてくれる打者である。
これまでこのコラムでは何度も書いてきたが、これから対戦する投手はどんどんレベルアップしてくる。メジャーで活躍するような速くて重く、そして動くボールを投げるタイプが増えてくる。そういう球を打ち崩すには、ポイントを引きつけて逆方向に強い打球を打てるタイプの打者が必要になってくる。
今の侍のメンバーで言えば菊池や青木、坂本勇人(巨人)に秋山翔吾(西武)、内川といった選手たちがこれに当たる。
一方、足を大きくあげてタイミングをとったり、比較的ポイントを前にしてさばく打者は、こうした動くボールへの対応がなかなか難しい。このタイプは中田翔(日本ハム)や山田、松田宣浩(ソフトバンク)らがいる。
ただ彼らがいいバッターであるのは、失投を逃さずに1球で仕留める集中力と技術がある点だ。しかも前でさばく分だけ芯で捕えたときには長打の確率が高く、試合を決められる力を持っているということだ。