畠山健介のHatake's roomBACK NUMBER
昨年9位から全勝優勝の立役者は?
畠山健介が語る、最高のフッカー。
posted2017/02/03 08:00
text by
畠山健介Kensuke Hatakeyama
photograph by
Kiichi Matsumoto
ジョージ(・スミス)がラックからこぼれ出たボールに飛び込む。レフリーの大槻卓さんは笛を吹かない。反則ではない、ということだ。本来ボールをさばく役割のスクラムハーフである日和佐(篤)は、ボール確保最優先のためにジョージが作ったラックに入っている。司令塔のコス(小野晃征)も、ラックでボールを確保している。
僕は電光掲示板の時計に目をやった。39分57秒。プレーを切れば試合が終わる。僕は蹴り損じないことだけを意識して、ボールを外に蹴りだした。
長い笛が2万人の観客の叫び声を切り裂くように鳴り響いた。試合終了を告げるノーサイドの笛。勝った。僕たちサントリーサンゴリアスは、4年ぶり7度目の日本選手権優勝と共に、4年ぶりの2冠を達成した。
トーナメントで大事なものは3つある。
日本選手権決勝は緊迫した展開、ハイレベルな戦いとなった。リーグ戦でパナソニックワイルドナイツと戦った時はスクラムで優位に立ち、セットプレーを起点に圧力をかけ続けたことが勝利につながったが、決勝ではスクラムの優位性はなくなり、今季のトップリーグで最多トライを奪ったサンゴリアスをノートライに抑えた。パナソニックのディフェンスには脱帽だ。アタックでも何度もピンチになった。よく勝てたと思う。それほどパナソニックの圧力は凄かった。
トーナメント方式、負けたら終わりの「ファイナルラグビー」。そこで大事なのはディフェンス、我慢、そして規律だ。
監督の(沢木)敬介さんはよく言う。「ディフェンス=態度」だと。どれくらい本気で(相手を)止めたいと思うか、その態度がディフェンスに現れる。本気で相手を止めたい、本気で勝ちたいと思ったら、タックルしてもすぐに起き上がり、ディフェンスする態勢を整える。スキルよりもそういった部分がディフェンスでは大事になってくる。決勝では両チームとも素晴らしい「態度」だった。特にパナソニックは、決勝で僕たちをノートライに抑え込んだ。並大抵のことではない。