“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
守備戦術が発達した高校サッカー界。
ストライカー不足の理由は何なのか?
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTadakatsu Matsuzaka
posted2017/01/14 07:00
青森山田の鳴海彰人は勝負強さと得点力にずば抜けたストライカー。どこまで成長するか?
「耐えて、耐えて、刺す」というチームばかりに。
極端な守備陣形をとらずしても、DFライン間のチャレンジ&カバー、ボランチのプレスバック、守備時の数的優位を作るなど、どのチームも質の差はあれど、守備に対する高い意識がチームコンセプトとして中心にあった。
今大会、とにかく「耐えて、耐えて、刺す」というスタイルのチームが多かった。
このトレンドにより、「絶対的なストライカーを持たない強豪チーム」は、最後を決めきれないことで、最後に「刺されて」しまっていたのである。絶対的なストライカーを持ったチームであれば、その選手を最大限に生かす戦術を採用することで、この「魔の悪循環」を打ち砕くことが可能となるわけだが……。
大前元紀、大迫勇也という「本物のストライカー」。
FW大前元紀(現・大宮)を擁して第86回大会を制した流通経済大柏と、FW大迫勇也(現・ケルン)を擁して第87回大会で準優勝まで勝ち進んだ鹿児島城西は、分かりやすく「絶対的なストライカー」がいるチームだった。
当時の流通経済大柏は、その年のインターハイ、高円宮杯全日本ユース(現・高円宮杯プレミアリーグ)の2つの大会で得点王を獲っていた大前の決定力を最大限に生かすサッカーをしていた。彼にボランチの田口泰士(現・名古屋)、サイドアタッカーの比嘉祐介(現・千葉)、中里崇宏(現・横浜FC)らがボールを供給し、大前はゴールを量産。選手権優勝&得点王を獲得した。
鹿児島城西も同様、ずば抜けた決定力と存在感を放つ大迫を前線に置き、両サイドにはスピードで突破出来るアタッカーを、ボランチにはパスセンスに秀でた大迫希(現・藤枝MYFC)を配して、質の高いボールをエースに送り込んでいくスタイルだった。大迫自身は、得点王プラス、1大会10得点という新記録を打ち立てるほどの活躍を見せた(この記録は未だに破られていない)。
Jユースの力が増している昨今、大前、大迫クラスのストライカーはなかなか高校のチームには現れ難くなっているが、それでもある程度の得点力を持ったエースがいるチームは存在した。
だが、今大会はそんなストライカーが本当に少なかった。