“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
守備戦術が発達した高校サッカー界。
ストライカー不足の理由は何なのか?
posted2017/01/14 07:00
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph by
Tadakatsu Matsuzaka
ひと言で言うと、ストライカー不足の大会だった。
市立船橋、桐光学園、東福岡がいい例で、「絶対的なストライカーがいれば……」と危惧されていたチームが、結局ベスト4までたどり着けなかったからだ。
この3チームに共通しているのが、シーズンの最後まで、前線に君臨する絶対的な存在が生まれなかったことである。
市立船橋は3人のFWが、東福岡は2人のFWが、最後までチーム内でしのぎを削っていたが、その競争は絶対的な選手が不在なことの裏返しだった。桐光学園は期待していたストライカーが伸びきれず、本来はサイドハーフの2人がツートップを組む事態となっていた。
現在、高校サッカー界、いやユース年代のチームにおいて、守備戦術は必要不可欠な要素となっている。もはや攻め続けることが勝つ定法だとするチームは少数で、どのチームも「きっちり守った上で、攻める時は攻める」という攻守の切り替えを重視したコンセプトを持っている。
だからこそ、どのチームも守備戦術はある程度しっかりしているし、ましてや格上が相手となると、さらに極端な守備陣形を敷いてくることさえある。
戦術的に極端な守備陣形を敷くチームが台頭。
もちろんこれまでも、極端な守備陣形を敷いてくるチームはいた。だが今大会は、佐野日大や長崎総合科学大附属のように、後ろに5バックもしくは4バック+1スイーパーを置き、ボランチのラインも下げ、わずかな攻撃の糸口を90分間のどこかで見出していく……という戦術をとるチームがいたことは、やはり象徴的だったと言わざるをえない。
佐野日大は準々決勝の駒澤大高戦で見せたように、終盤までロースコアに持ち込んで、そこから攻撃的な選手を投入し、残り数分で一気に攻めへと転じてゴールを奪っていた。
チーム内でこの戦術のコンセンサスが非常にしっかりとれていたからこそ、駒澤大高を相手に、1点のビハインドから同点、終了間際に逆転と効率よく点を獲って逆転勝利を収めることができたのだと言える。
長崎総合科学大附属は、個の打開力を持った3トップとトップ下1枚の、計4枚を前線に残すタイプだった。彼らに関してはポジションを固定せずに、距離感を保ちながらフレキシブルにポジションを変えられるようにしていた。選手権の初戦、中盤の構成力で上回っていたはずの桐光学園は、その堅い守備と効率的なカウンターの前に飲み込まれた。