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<錦織が開いた世界への扉> 日本男子新世紀を担う3人。 ダニエル太郎/西岡良仁/綿貫陽介
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byHiromasa Mano
posted2017/01/12 11:05
左からダニエル、西岡、綿貫。日本男子テニス界の将来を背負って立つべき3人は、着実に成長を遂げている。
「少ないチャンスを確実に生かせる力をつけないと」
しかし、ダニエル同様に西岡も最高85位でストップした現実は、トップ100からトップ50入りへステップアップする段階に大きな壁があることを示している。
「体をもっと強くしないといけないし、少ないチャンスを確実に生かせる力をつけないといけない。僕は1ポイントを楽に取れるテニスじゃないので、気持ちが落ちるとダメになってしまう。課題は多いです」
だからこそ、西岡の進む道が他の日本選手に教えることは多い。
全日本制覇で注目度急上昇の18歳、綿貫の可能性。
実績でこの2人と並べるにはまだ早いが、注目度では負けていないのが18歳の綿貫陽介だ。10月に大阪でグランドスラム・ジュニアと同格の「世界スーパージュニア」を制し、晴れてジュニアを卒業したかと思うと、翌週は全日本選手権で27年ぶりの10代チャンピオンとなった。
国内上位6人は出場していなかったが、自分よりランキングが上の選手を次々と破っての栄冠だ。上背は181cmあるもののまだ体の線は細いが、強力なサーブとしなやかで正確なフォアに加え、挑戦者という立場の強みも存分に生かした。
国内の同世代の中でもなかなかトップになれなかった綿貫は、常に遅れをとっているという自覚とともにジュニア時代を過ごしていたという。しかし、テニス一家の3兄弟の末っ子として育ったまっすぐな性格で、その状況をバネにしてきた。そして、同世代の誰よりも早く〈日本一〉の肩書きをさらったのだ。
昨今のテニス界は10代プレーヤーが活躍しにくい時代といわれる。よりフィジカルが重要になり、精神面も含めて成熟度が求められるようになった。それでも現在、世界のトップ100にはアレクサンダー・ズベレフとテイラー・フリッツという19歳が2人いて、綿貫と同じ18歳では108位のフランセス・ティアフォーを筆頭にトップ200に4人が名を連ねる。彼らは丸1年以上前にジュニアを完全卒業し、プロサーキットに軸足を移していた。