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<錦織が開いた世界への扉> 日本男子新世紀を担う3人。 ダニエル太郎/西岡良仁/綿貫陽介
posted2017/01/12 11:05
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph by
Hiromasa Mano
その長い腕が向いているのか、物怖じしないオープンな性格がそうさせるのか、集合写真で〈自撮り〉のカメラを持つのはいつもダニエル太郎の役まわりだ。11月に有明で行なわれたチャリティーイベントでは、錦織圭、アンディ・ロディック、マイケル・チャンという錚々たるメンバーに自ら無邪気に声をかけて集合させた。
9月、大阪でのデビスカップでもそうだった。ウクライナとのプレーオフ、23歳のダニエルは当時20歳の西岡良仁とともに消化試合も含めてシングルスでそれぞれ2勝を挙げ、ワールドグループ残留に大貢献。全米オープンから帰国して日の浅い錦織を休ませ、チームの将来性を見せた。勝利後、スタンドのファンにも声をかけてカメラにおさめた微笑ましい一枚。そこには、開放的で新しい日本チームの姿が写っていた。
「これまでいろんな国でいろんな人といろんな言葉で話したりしてきたおかげで、オープンな性格だとは思っています」
クレーコート育ちらしく、粘り強いストロークが信条。
アメリカ人の父の仕事の関係で、生まれはニューヨーク。小学校時代は日本で過ごしたが、テニスの腕を磨くために父の勧めで13歳のときにスペインのバレンシアに渡り、以来そこを拠点にしているというインターナショナルな生い立ちだ。191cmの長身にハーフらしい端正な顔立ち、英語と日本語に加えてスペイン語も流暢に話すコミュニケーション力に加え、'60年代にデビューしたイギリスのロックバンド、レッド・ツェッペリンの大ファンだというエピソードには海外メディアも食いついた。
クレーコート育ちらしく、ベースラインからトップスピンを駆使した粘り強いストローク戦を得意とする。17歳の頃からスペインを中心にプロサーキットをまわって地力をつけ、'14年にチリのビニャデルマールで初のツアー本戦にして準々決勝に進んで注目された。一昨年末にトップ100入りし、昨年4月には85位まで上昇。昨年は四大大会の全米を除く3大会に本戦ストレートインを果たし、思い入れの強い全仏でグランドスラム初勝利を手にした。