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<錦織が開いた世界への扉> 日本男子新世紀を担う3人。 ダニエル太郎/西岡良仁/綿貫陽介
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byHiromasa Mano
posted2017/01/12 11:05
左からダニエル、西岡、綿貫。日本男子テニス界の将来を背負って立つべき3人は、着実に成長を遂げている。
170cm、64kgの西岡はどう体格の不利を補っている?
奇しくも同じ85位にダニエルより4カ月遅れの8月に達した西岡は、多くの日本選手の希望の光だろう。何しろ、178cm、75kgの錦織でも小さいと言われる世界で、170cm、64kgという華奢な体である。'14年の全米で初めてグランドスラムの予選にチャレンジしていきなり突破。これまで通算7回の予選挑戦で計4回突破している。長年、日本選手はとにかくこの予選の壁に跳ね返され、ついに本戦の舞台に立てずに現役を終えた選手も少なくない。それを思えば、驚くべき予選突破率だ。
昨年のマイアミ・マスターズでは予選を勝ち上がって当時世界ランク23位のフェリシアーノ・ロペスも破り、3回戦に進出した。マスターズ1000以上で3回戦に進出した日本選手はこの20年で錦織以外に唯一という、隠れ快進撃である。
IMGアカデミーに留学した西岡に、錦織もエール。
「大きな舞台でもあまり緊張しないし、上の選手が相手でも気持ちで引いてしまわない気はする」という性格が西岡のキャリアを後押ししてきたことは間違いないが、錦織というトッププレーヤーが身近にいたことも無関係ではなかった。15歳のときに錦織と同じ盛田ファンド生として米国フロリダのIMGアカデミーにテニス留学。ジュニア時代にも全米オープンで四強入りするなど活躍し、プロサーキットでもフューチャーズからチャレンジャーへとステージを上げて優勝を重ね、積極的にツアーの予選に挑戦する姿勢は錦織も応援していた。
「チャレンジャーのほうが確実にポイントを取れるけど、上の選手との試合を経験することで、負けても得られるものがある。西岡君が挑戦していることはいいサンプルになると思う」
体格的にパワーやサービス力で劣るのは無理もないが、それを補うスピードと粘り強いストロークを武器とし、左利きのアドバンテージもある。10代の頃は感情が表に出やすく、〈キレやすい〉タイプだったが、そのエネルギーをガッツという長所に変換する術を覚えたことが躍進を支えた。