ニッポン野球音頭BACK NUMBER
CSでの6失点と三浦大輔の準備。
DeNA今永昇太、2年目への糧に。
text by
日比野恭三Kyozo Hibino
photograph byHideki Sugiyama
posted2017/01/05 07:00
完全アウェーの中で味わった屈辱。今永がベイスターズの主戦となるためには、必要な洗礼だったのかもしれない。
「試合中に、自分自身を客観的に見れなかった」
「そうですね……。シーズンで唯一、試合中に、自分自身を客観的に見れなかった。動揺していたというか、どっしりと落ち着いて投げることができていなかった。ああいった雰囲気のなかでの、もうひと踏ん張りの仕方というものを、頭でわかっているとかではなく、あの場面ではそれを表現できないといけない。もう結果が出ている以上、何を言っても言い訳になりますし、純粋にあそこで自分の力が出せなかったことがすごく悔しい」
カギになった一球として挙げたのは、2点を先制されて、なお1アウト一、二塁、エルドレッドに投じた初球だった。
右打者の外角、141kmの直球に身長196cmの巨漢助っ人の腕は伸び、ライトに上がった飛球はそのままフェンスを越えた。
エルドレッドへの「中途半端」な初球が致命傷に。
「あれは際どいボールではなく、きっちりとしたボール球を投げなければいけなかった場面。だけど、なんとかこの回を早く終わらせたい、あわよくばゲッツーとか、初球を打ち損じてくれないかなという中途半端な気持ちで投げてしまいました。日本人のバッターだったら、まさかオーバーフェンスまでもっていかれるようなボールではなかったんですけど……」
被弾の後にも安打を連ねられ、カープの攻撃は2番・菊池涼介の2度目の打席まで続いた。
カギになった一球をもう一つ挙げるなら、すべての始まりとなった先頭の田中広輔の打席、フルカウントから四球を出したボールではなかったか。このシリーズ、第3戦終了時点で12打席のうち11出塁、9打数8安打と絶好調のリードオフマンを生かすか、止めるかの分岐点となる打席だった――そう水を向けると、今永は言った。