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CSでの6失点と三浦大輔の準備。
DeNA今永昇太、2年目への糧に。
posted2017/01/05 07:00
text by
日比野恭三Kyozo Hibino
photograph by
Hideki Sugiyama
今永昇太にとっての2016年には、充実感と悔恨が入り混じる。
ドラフト1位指名の誉れとともにプロの門をくぐると、期待に違わぬ才能をきらめかせて開幕ローテーション入りをつかんだ。終わってみれば、先発22試合、135回1/3を投げて8勝9敗、防御率は2.93。そんな数字で表される自身の足跡を、こう評価する。
「プロ入りする前は不安しかなかった。1勝もできないんじゃないかというぐらい自分に対するハードルが低かっただけに、よく投げたなという思いはあります。でも数字を見ると、なんか中途半端だなという感じがしますし、マイナスの言葉しか出てこないですね」
ポジティブとネガティブ――混在する2つの評価は、そのままクライマックスシリーズでの投球内容に当てはまる。
巨人戦では7回1失点、しかし広島戦では初回6失点。
ファーストステージ第2戦では、ジャイアンツ打線を相手に7回1失点の好投を披露。同点のままマウンドを譲ったが、2安打しか許さず、大舞台で自らに課せられた役割をまっとうした。
しかし、負ければ敗退が決まるファイナルステージ第4戦、勢いづくカープ打線に飲みこまれるかのように初回6失点を喫した。スコアシートに残された「防御率54.00」という数字が、新人左腕が背負うことになった十字架の重みを物語る。
敗北から1カ月の時を経た11月半ば、秋季キャンプ地の奄美で訊いた。あの一戦、あの1イニングを振り返って、いま何を思うか、と。
今永は言葉を絞り出すように、ぽつぽつと語った。