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CSでの6失点と三浦大輔の準備。
DeNA今永昇太、2年目への糧に。
text by
日比野恭三Kyozo Hibino
photograph byHideki Sugiyama
posted2017/01/05 07:00
完全アウェーの中で味わった屈辱。今永がベイスターズの主戦となるためには、必要な洗礼だったのかもしれない。
「ストライクでしょ」と表情に出してしまった。
「自分としてはストライクでもボールでも、どちらでもいいくらいの球だった。そこでボールと判定された時に、ぼくがいちばんやってはいけなかったのが、『いや、いまのはストライクでしょ』という表情をマウンド上で表現してしまったこと。
ある意味、自分の責任から逃げ出してしまった部分があったのかなと思います。いまのは本当はストライクだけど、審判がボールだといったからランナーが出てしまった、だからいまの一球はぼくに責任はないよと……。そういう心のスキがあったことが、あの回の大量失点につながったと思う」
山あり谷ありのプロ1年目は、横浜のレジェンドのラストイヤーと重なった。
三浦大輔が現役最終登板に臨もうとしていた9月29日の試合前、横浜スタジアムのブルペンを今永は訪れている。
「三浦さんは二歩三歩先のレベルの準備をしている」
「三浦さんが(試合前に)ブルペンで投げるところを見たことがなかったので、行ってみようかなという思いはあって。本当に行っていいものかわからなかったんですけど、ちょうどそのタイミングで、バッテリーコーチの光山(英和)さんに言われたんです。『大輔の試合前の準備はすごくいいから、見に来たらどうだ』って」
三浦はすでに実戦モードに入っていた。打席にブルペン捕手を立たせ、具体的な打者名を挙げながら、コースと球種を宣言し、対戦するイメージをもって投げ込んでいた。それが新鮮だったと今永は言う。
「ぼくは自分の感覚を確認するのに精いっぱいで、投球練習のための投球練習をしてしまうことが多かった。でも三浦さんは、感覚とか調子(の確認)じゃなくて、自分のいまの調子だったらどういう投球をすべきなのかをブルペンですでに考えていた。二歩三歩先のレベルの準備をしていると感じました。新たな自分の引き出しになりましたね」