セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
“本物の目利き”がまた1人……。
サバティー二がついにローマを去る。
posted2017/01/02 08:00
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph by
AFLO
ある名物フロントがこの秋、職を辞してASローマを去った。
カルチョ界きっての辣腕SD(スポーツ・ディレクター)だったワルテル・サバティーニは、2017年夏まで残っていた自身の契約の解除を申し出ると、ひっそり表舞台から退いた。
「私はローマの変革に失敗した。スクデットを取れなかったことを残りの半生引きずりながら生きていくつもりだ」
現場を統括する任に就いた2011年夏から5年と少しの間、リーグ戦での2位が2度あった。コッパイタリアでは2012-2013年シーズンの準優勝が最高成績。タイトル獲得はついぞ叶わなかった。
サバティーニが来る以前、最後にスクデットを獲った2001年以降の10年間にも、ローマがセリエAで2位に終わったシーズンは実に6回を数える。これでは“万年2位”と揶揄されても仕方ない。
今季も18節終了時点のローマは、首位ユーベを勝ち点差4で追う暫定2位につけるが、自身の手法の限界を悟ったサバティーニは、シーズン途中にも関わらず身を引くことを選んだのだ。
「トッティのシュートは相対性理論と矛盾する」
還暦を迎えたサバティーニは、自らが旧世代に属するスカウトであることを潔く認めていた。無精髭にシガレッタ(紙巻き煙草)を欠かしたことはない。
現役時代のサバティーニは、取り立てて見るべきもののない二流の選手だった。
たった11試合しかないセリエA出場歴のほとんどは、ちょうど40年前にあたる1966-1967シーズンに1年だけ在籍したASローマで記録したものだ。
1984年に現役を引退し、一旦監督業を志した彼だが、数年でフロント界へ転身した。
ドストエフスキーを愛読し、休暇には油絵を嗜むカルチョ界の異才サバティーニは奇抜な発言でも知られる。
「トッティはノーベル物理学賞を受賞するべき。彼のシュートの弾道は相対性理論と矛盾する」
「政治的イデオロギーに関心があるサッカー選手などいない。ノンポリが過ぎるあまり、彼らはコーナーキックこそが世界で最も重要なことだと考えるようになる」