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“本物の目利き”がまた1人……。
サバティー二がついにローマを去る。 

text by

弓削高志

弓削高志Takashi Yuge

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posted2017/01/02 08:00

“本物の目利き”がまた1人……。サバティー二がついにローマを去る。<Number Web> photograph by AFLO

ローマの“アンタッチャブル”であったトッティの処遇に心を砕いたのもサバティーニだった。

ネスタ、ガットゥーゾらを発掘した本物の目利き。

 還暦を過ぎてもかなりの性豪であることも告白し、彼独特の表現が誤解を生むこともしばしばあった。

 SDサバティーニは「仕事には対価が与えられるべき」という持論を持ち、選手の移籍交渉で揉める原因の1つになる代理人手数料を気前よく払った。

 だから、有名無名を問わずエージェントやさまざまな境遇の選手の家族から慕われた。癒着を咎められても「代理人の存在はこの世界の必要悪だ」と言いきり、交渉のプロに徹した。

 そして、彼の目利きは一級品だった。

 ラツィオのユース責任者だった当時、若き日のDFネスタのトップチーム昇格を推挙し、ペルージャ時代にはやんちゃ坊主だったMFガットゥーゾを発掘した。その後もDFコラロフ(現マンチェスターC)やMFパストーレ(現パリSG)など、クラブを渡り歩く中で掘り当てた原石は数知れない。

北米の投資家とサバティーニの間には、深い溝があった。

 ASローマの経営権が北米の投資家グループに渡った5年前の夏、サバティーニは古巣からフロントの要職に招かれた。“ローマ・アメリカーナ”時代最初のSDとして、チームの手綱を任されたのだ。

 ただし、現場の総責任者であるサバティーニSDと遠く大西洋の向こうからタイトル獲得を急かす経営陣との間には、サッカーに対する思想に根本的な隔たりがあった。

 それは、水面下で決して埋まることのない深い海溝のように、両者を分断した。

 1年、2年と結果が出ないことに業を煮やすパロッタ会長は、SDサバティーニへの事実上のお目付け役として、子飼いのビジネスマネージャーをローマに送り込んだ。それだけでなく、息子クリスが開発した選手個人のプレー解析ソフトの使用をテクニカルスタッフへ義務付けるなど、おおっぴらに現場介入を図るようになった。

 収支管理は当然厳しく、好成績・高収入のサイクルを確立した王者ユーベと正面切って戦えるような補強資金は期待できない。

【次ページ】 「彼らにはサッカーは計算と統計の対象だろうが……」

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ワルテル・サバティーニ
ローマ

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