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誰も知らない韓国サッカーと徴兵制度。
鳥栖・金民友はなぜ日本を去ったのか。
posted2017/01/04 08:00
text by
吉崎エイジーニョ“Eijinho”Yoshizaki
photograph by
Kenzaburo Matsuoka/AFLO
あけましておめでとうございます。
2016年は日韓サッカーシーンをウォッチングする立場からすると、静かな1年だったと言わざるを得ない。最大のトピックスはリオデジャネイロ五輪アジア最終予選を兼ねたU-23アジア選手権決勝。
日韓が対決し、日本が3-2の劇的な勝利を挙げた。これにより手倉森監督率いるチームへの注目度・期待度がぐっと高まり、やはり日韓戦の影響力は強いと感じさせた。また、Kリーグでは優勝したFCソウルで高萩洋次郎がレギュラーとして活躍するというトピックスもあった。
一方、アジアチャンピオンズリーグではJリーグ勢がすべてラウンド16で敗退。大会終盤での日韓対決が実現しなかった。フル代表では、双方海外組が出場する日韓戦は2011年8月以来実現していない。そういった点が寂しさを助長した。
そんななか、心温まるトピックスがあった。
サガン鳥栖・金民友(キム・ミヌ)の「ホーム最終節スピーチ」だ。10月29日、7年間プレーしたチームとの惜別の言葉を残した。
「手紙を書いてきました。下手な日本語ですが、聞いてください」
そう切り出し、「国籍に関係なく、いつも1人の人間として温かく接してくれた」といった内容を熱い口調で伝え、反響を呼んだ。
サガン鳥栖の金民友の退団理由は「兵役のため」だった。
CS放送のYouTube公式チャンネルで動画がアップされ、4万3000を超えるアクセスを記録。同サイトのチャンピオンシップのダイジェスト動画が約20万アクセスだから、リーグタイトルなどに関する話題以外ではきわめて高い関心度だった。
筆者自身、キム・ミヌとは 2012年頃から取材現場で言葉を交わす仲になっていた。筆者が韓国の地で、韓国語でも執筆活動を行ってきたことを伝えるや、 「僕も書いてほしいです」とストレートな関心を示した。
当時22歳。
あのスピーチと同じ、一直線に向かってくる魅力を、当時も感じた。
オランダPSVの入団テストに落ち、大学も中退して鳥栖にたどり着いたという経緯がある。「自国でも自分を知られたい」という意識が強いんだなと感じた。
そんな金民友が愛するクラブを離れる理由は、「韓国で兵役に服務するため」。
その一方で「兵役」と言いながらも、12月9日にKリーグ水原三星への完全移籍が発表になった。この点、筆者に対する問い合わせも多かったので、ひとつレポートをしたためてみることにした。
「韓国サッカー界と徴兵制度」というテーマで。