高校サッカーPRESSBACK NUMBER
国見で優勝2回の三浦淳寛さんに
選手権の勝ち方を聞いてみた。
posted2016/12/29 17:00
text by
松本宣昭Yoshiaki Matsumoto
photograph by
NIKKAN SPORTS
高校のサッカー部員ならば、誰もが一度は夢を見る。選手権決勝の舞台で、高々と優勝旗を掲げてみたい――。
ただしこれは、実現の可能性がとてつもなく低い夢でもある。全国4000校以上が都道府県予選に参加し、頂点に立てるのはたった1校だけ。だから、日本じゅうの高校サッカー部員の夢は、夢のままで卒業の日を迎えることになる。
それなのに、高校3年間で2度も夢を叶えた人がいる。
三浦淳寛。長崎・国見高校の1年時と3年時に選手権を制覇し、2年時もベスト4まで進んだ。背番号10のエースとして臨んだ3年時の第71回大会決勝・山城戦では、華麗なドリブルから強烈な左足シュートでゴールネットを揺らした。あのとき、長崎県のサッカー少年の多くが、天に祈りを捧げるゴールパフォーマンスの真似をした(長崎県出身、当時11歳だった筆者が言うんだから本当です)。
ならば、本人に聞いてみよう。
どうすれば、選手権で勝てますか?
この答えはきっと、12月30日に開幕する第95回高校選手権に出場する選手たちにとっても、役立つはずだ。
三浦氏「長髪選手のいた山城との決勝は燃えた」
三浦氏が最も強調したのが、「勝つ」ことへのこだわりである。
「細かい技術や戦術は、選手権が始まってから急に伸びるものではありません。でも、『勝つ』という気持ちを、相手よりも強く持つことはできる。何度失敗してもいいから、気持ちだけは絶対に相手に負けないこと。例えばクラブW杯の鹿島アントラーズは、『失うものはない。何が何でも勝ってやる』と信じてプレーしていた。だから、レアル・マドリーとの決勝で、あれだけの試合をできたのだと思います。
当時の僕らも、良いプレーをして、試合に勝つことだけに集中していました。周りからは『国見が勝って当然』と見られていたけど、『俺たちは全国のどのチームよりも練習してきた。だから負けるわけがない』と思えていたからこそ、プレッシャーは感じませんでした。
中でも3年のときの山城との決勝は、燃えていました。山城にはスター選手が多くて、石塚啓次のように長髪の選手もいた。僕は石塚と面識があったので、特に意識はしなかったんですけど、後輩たちは『坊主頭で厳しい練習に耐えてきた自分たちが、負けるわけにはいかない。今日は石塚にプレーさせないっす』と宣言していましたから。実際、下級生たちは素晴らしいプレーを見せていた。本当に僕は、チームメイトに恵まれていました。
現在の選手たちは環境も良くなって、技術レベルも上がっています。これは素晴らしいことですが、その反面、勝つことへのハングリー精神は薄まっているように思います。技術を高めながら、いかに勝ちへのこだわりを養えるか。これは指導者を目指している僕にとっても、大きな課題となっています」