セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
長友佑都は生き残り本田圭佑は……。
去る者と残る者のミラノダービー。
posted2016/11/22 12:00
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph by
AFLO
20日のミラノ・ダービーは、時代の変わり目にあたる特別な一戦だった。
ミランとインテル、2つの名門の過去と現在、そして未来が交錯したゲームだったからだ。
日本でのロシアW杯予選の後、それぞれのチームに再合流したMF本田圭佑とDF長友佑都はともにベンチスタートだったが、彼らはスタジアムにあった惜別ムードに気がついていただろうか。
ミランの帝王シルビオ・ベルルスコーニが、久方ぶりにスタジアムへ姿を見せていた。夏に心臓を手術した老齢のオーナーは、中国投資ファンドへのクラブ株完全譲渡を来月に控えている。
雨にたたられ、底冷えのするスタジアムに集った7万8千人の観衆は、当夜の試合が“ベルルスコーニのミラン”にとって事実上最後のダービーになることを熟知していた。あれほど老害への批判の声をあげていた南側ゴール裏のウルトラスたちも、高さ数十mに及ぶ特大コレオグラフィーをベルルスコーニへ捧げた。
「オーナーへダービーの勝利を」
表舞台から去ろうとする主役への敬意を欠かすことはできない。それは欧州サッカークラブにおけるモラルであり、モチベーションの源泉の1つである。未来あるミランの若手選手たちとミラニスタたちの思いは1つだった。
VIP席にはインテル新オーナーの息子が。
去る者があれば、来たる者もいる。
サン・シーロのVIP席には、インテルの新オーナーである南京の家電王、張近東が25歳の息子スティーブンをクラブ経営会議の役員として送り込んでいた。
加えて、今月初めの前監督デブールの解任を受け、新たにインテル指揮官の座に就いた監督ピオリにとって、初陣がダービーだった。ビッグクラブでの初采配に、ピオリの指導者としての野心が疼かないはずがない。