セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
長友佑都は生き残り本田圭佑は……。
去る者と残る者のミラノダービー。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2016/11/22 12:00
明確なタスクとともにピッチに送り出されるのは、能力を信頼されているから。長友佑都のマークマンとしての力は確かなものだ。
サンシーロを“物理的に”揺らしたゴール。
「チームのためにもファンのためにも、絶対に負けるわけにはいかなかった」
インテルのガラリと入れ替わった中盤ではMFブロゾビッチが組み立て役となり、前半からミランを攻め立てた。24分と26分にはFWペリシッチとMFコンドグビアのヘディングシュートがそれぞれ相手ゴールを脅かした。
だが、上位を堅実に走るミランの選手たちに焦りの色は見られず、彼らは守備ラインを下げ、淡々と攻撃を耐え凌いだ。
敵陣でボールを奪ったミランMFボナベントゥーラが、43分にショートカウンターを仕掛ける。彼のパスを受け右サイドから切り込んだFWスソは、ファーサイドの左ポスト根本を狙いすまして撃ち抜いた。
FWスソの先制ゴールによって、スタジアムは文字通り揺れた。万を越す数のミラニスタたちが同時に飛び跳ねれば、巨大建造物であるサン・シーロですら物理的に震わすことができるのだ。
インテリスタも黙ってはいなかった。
53分、MFカンドレーバが目の覚めるようなミドルシュートをミランゴールに突き刺すと、スタジアムを揺らすのは彼らの番だった。
冷たい夜気の中、北側ゴール裏で焚かれた爆薬の煙が広く流れて、喉と鼻を刺激する。ダービーはいつもきな臭い。
スソを抑えるミッションを与えられ、長友がピッチへ。
ダービーに火が着いた。ミランは怯むどころか、追いつかれた5分後に反撃に出た。
右サイドをFWバッカと崩したFWスソは、エリア内で相手DFミランダを振りきった。憎いほど冷静に名手ハンダノビッチの動きを見極めると、利き足とは逆の右足でファーポストへ流し込んだ。剃刀のような切れ味の勝ち越しゴールだった。
FWスソにとって、マーカーのインテル左SBアンサルディはいないも同然だった。監督ピオリはたまらず、俊足のDF長友を“対スソ用ストッパー”として65分に投入した。
「監督から『スソをしっかり抑えろ』と。バランスを考えながら、スソ(のプレーエリア)を下げることを心がけた」(試合後の長友)