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1対1なしでボールを奪うのが最先端!?
29歳の監督がブンデスの文化を覆す。

posted2016/11/22 11:30

 
1対1なしでボールを奪うのが最先端!?29歳の監督がブンデスの文化を覆す。<Number Web> photograph by AFLO

ジーンズ姿でコーチングエリアに立つ姿も、まさに若き改革者。まるで新興IT企業の代表のようだ。

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遠藤孝輔

遠藤孝輔Kosuke Endo

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 ツヴァイカンプフ(1対1)なしにボールを奪う――。

 ことさらに「デュエル」の重要性を説く日本代表のヴァイッド・ハリルホジッチ監督にとっては、寝耳に水のような言葉かもしれない。だが、「それこそが自分が理想とするサッカー」と力説する指導者が、欧州サッカー界の最先端で異彩を放っている。

 ドイツの最高峰リーグで上位争いを演じているホッフェンハイムの指揮官、ユリアン・ナーゲルスマンだ。'16年2月11日に弱冠28歳でブンデスリーガ史上最年少監督になった風雲児は、ドイツサッカーの美徳とされるツヴァイカンプフの信奉者ではない。むしろツヴァイカンプフは偶然に左右される側面が強いと考えているのだ。

 例えば、激しい対人戦が起きたとする。一連のプレーがフェアかどうかをジャッジするのはレフェリーだ。その審判が選手同士の接触に過剰反応を示すタイプなら、いくら対人戦に強い選手でも、ファウルを取られて持ち味を活かせなくなる。また、ピッチ状況やボールの動きによって、対人戦が有利にも不利にも傾くのは事実で、こうした不確定要素にもナーゲルスマンは難色を示している。

1対1を制する者が試合を制する、という根強い思想。

 では、ナーゲルスマンはいかにしてボールを奪うのが得策と考えているのか。複数のシステムを操るなど「戦術家」としても称えられる機会が多い指揮官は、フランクフルター・アルゲマイネ紙のインタビューでこう語っている。

「相手のパスコースを減らすんだ。ボールホルダーにうまくプレスを掛けてね」

 何も難しい話ではない。ナーゲルスマンは敵のパスミスを誘うことや、連動した守備からのインターセプトを重視しているだけなのだ。ただ、その言葉を発する前に「ツヴァイカンプフなしにボールを奪う」と口に出したところに、多くのドイツメディアは驚きを隠さなかった。

 ドイツサッカー界には「ツヴァイカンプフを制する者が試合を制する」という概念が根強く残っている。走行距離などがクローズアップされるようになった最近でも、多くのドイツ人はツヴァイカンプフを軽視しようとはしない。では、ツヴァイカンプフが本当にチームの勝利を呼び込むのか。1つの参考資料に過ぎないが、今季のブンデスリーガに目を向けてみると、必ずしもそうではないことが分かる。

【次ページ】 1対1ではたいして勝たずとも、リーグでは3位。

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