スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
シメオネの神通力は消えたのか。
「攻めるアトレティコ」の勝算は?
posted2016/11/27 07:00
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph by
AFLO
まさかここまで一方的な展開となるとは。
11月19日、ビセンテ・カルデロンで行われた今季1発目のマドリーダービーは、レアル・マドリーの完勝に終わった。
23分の先制点はクリスティアーノ・ロナウドの直接フリーキックが壁に当たり、コースが変わってGKの逆を突いたもの。71分の追加点はサビッチの個人的ミスが招いた不用意なPKで決まった。
流れの中から崩されたのは大勢が決した後の77分、高速カウンターで仕留められた3点目だけだ。ゆえにゴールシーンだけを振り返れば、0-3は少々大げさなスコアだったと言えるかもしれない。
それでも多くのアトレティファンや番記者たちは、この敗戦を2014年や今年のチャンピオンズリーグ決勝を上回る「シメオネ体制における最悪の一戦」とまで表現している。
最後のカルデロンでのダービーで味わった屈辱。
彼らが今回の敗戦にそれほどの屈辱を感じた理由は、第一に舞台が昨年9月12日の3節バルセロナ戦(1-2)以来、22戦も無敗を保ってきたホームのカルデロンだったことだろう。
特に来季から新スタジアムに本拠地を移転するアトレティコにとって、この試合はカルデロンで戦う最後のダービーだった。
キックオフ前、バックスタンドに現れた横断幕には「俺たちの遺産は永遠に」と綴られていた。だが皮肉にもカルデロンでのラストダービーは、クリスティアーノ・ロナウドにハットトリックを許した屈辱の一戦として永遠にクラブ史に残ることになってしまった。
もう1つの、そして最大の理由は、この試合を通して「アトレティコらしさ」がほとんど見られなかったことだ。