セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
長友佑都は生き残り本田圭佑は……。
去る者と残る者のミラノダービー。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2016/11/22 12:00
明確なタスクとともにピッチに送り出されるのは、能力を信頼されているから。長友佑都のマークマンとしての力は確かなものだ。
長友がスソ相手に見せた守備の国のセオリー。
前日23歳になったばかりのアンダルシア出身の若武者は、なおも右サイドを崩そうと後ろを向いてボールを受けた瞬間、小柄な日本人DFにピタリと体を詰められたのを悟った。
前を向くことができず、やむなく後方へパスを戻したら、インテルの背番号55は離れ際に両手で背中を押してきた。もちろん笛は吹かれない。狡猾な嫌がらせだが地味に効く。
守備の国のセオリーを忠実に実行したDF長友は、時折逆サイドからポジションを変えて突っ込んでくるFWニアンの動きにも目を配りながら、FWスソに再び前を向かせなかった。マーク相手に疲れが見えた85分には、逆に左サイドを駆け上がり、低いクロスを放った。
チーム合流後3日しかなかったはずの長友の働きぶりは、新監督ピオリの目にも頼もしく映っただろう。
試合の主導権を握っていたのはミランだが、インテルも勝ち点0で終わるわけにはいかなかった。ここで敗れれば、来季のCL、EL出場圏と絶望的な差が開く。
ガムシャラに攻めて取った92分の右CKだった。
DFムリージョが頭で落としたボールをゴール左前に詰めていたFWペリシッチが左足で合わせて、インテルは土壇場で2-2に追いついた。
モンテッラ「彼らの目標はスクデットだったはずだがね」
試合終了とともに、冷静なことで知られる指揮官ピオリは両腕を振り回して走りだしていた。
「選手たちに求めたのは、冷静な頭と熱いハートを持つことだ。課題は多くあるがこのチームはこれから強くなれる。リーグ戦はまだ先が長いし、今夜の出来を見てチャンピオンズリーグ出場圏までいけると確信した」
上機嫌のインテル新指揮官とは対照的に、オーナーへ捧げるはずだった白星と単独2位浮上をふいにされたミラン監督モンテッラは、面白いはずがなかった。こういうときは元来の皮肉屋に戻って、相手をチクチク口撃しておくのがモンテッラ流だ。
「やっとのことで追いついた引き分けなのに、まるで勝ったかのように大喜びするインテルを見るのは悪くない気分だ。彼らの目標は、確か……スクデットだったはずだがね」