プレミアリーグの時間BACK NUMBER
モウリーニョ・マンUに化学変化を。
130億円で帰還、ポグバの存在意義。
posted2016/08/18 08:00
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph by
Getty Images
8月8日、新監督のジョゼ・モウリーニョが就任決定当初から望んでいた、ポール・ポグバのマンチェスター・ユナイテッド移籍が現実となった。23歳のフランス代表MFは、ユース時代の前回に続く2度目のマンU入り。契約終了と同時にユベントスへと放出された4年後に、移籍金8900万ポンド(約130億円)のスター選手として舞い戻った。
ただ、プレミアリーグでの選手の出戻りには成功例が少ない。そこそこの例としては、3シーズン前にベンフィカからチェルシーに戻ったネマニャ・マティッチがある。昨季は不振だったものの加入直後の2014-'15シーズンにはリーグ優勝に貢献した。
だが、一度は不要とされたクラブで復帰しての成功例となると、アーセナルでの一軍2年目に戦力外とされながら、7年後の1993年に復帰して主力となったマーティン・キーオンまで遡らなければならない。
中盤センターはマンUの泣きどころとなっていた。
それでも今回のポグバのケースでは、世界最高の移籍金を伴っていても「ギャンブル」や「リスク」といった言葉は聞かれない。むしろ国内メディアでは「ゲーム・チェンジャー(状況を一変させる戦力)」として大歓迎されてすらいる。この見方には、プレミアのクラブが昨季CL王者でもあるレアル・マドリーとの大物獲得競争に勝ったという意識も反映されているに違いない。
しかしながら混戦が予想される今季のプレミア優勝争いの中で、モウリーニョのユナイテッドを優勝候補の最右翼へと変え得る新戦力であることは間違いない。
ユナイテッドは2013年を最後にリーグ優勝から遠ざかり、その後3年間で2度のトップ4漏れまで経験している。特に中盤センターは昨季途中にウェイン・ルーニーがFWからコンバートまでされるなど、大きな弱点となり続けた。フィジカルの強さを重視するならマルアヌ・フェライニという駒はいた。昨夏にはバスティアン・シュバインシュタイガーという風格を含む重さが加えられた。
機動力であればモルガン・シュネイデルラン、ロングパスであればマイケル・キャリック、万能型としてはアンデル・エレーラという選択肢もある。しかし誰一人として、中盤でダイナミックな動力源となることができない。