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イタリアへのトラウマと、分析技術。
ドイツEURO準々決勝、PK勝利の内幕。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byAP Photo/AFLO
posted2016/07/05 17:00
PK戦は最終的に両チーム9人目までが蹴る展開に。この神経戦を制したのは30歳の守護神ノイアーだった。
PK戦でほとんど負けがない。
ドイツ代表は、EUROでは1度だけしか、W杯では1度も、PK戦に負けたことがない。その背景には勝負強さの他に、入念な分析があった。'06年のドイツW杯準々決勝のアルゼンチン戦では、相手選手のPKの特徴をメモにかいて、PK戦の際に当時のGKレーマンが読んでいたのが話題になった。
今大会にあわせて作られた「ペナルティーインサイト」はその分析力をさらに進化させ、活用するものだった。
例えば、決勝トーナメント1回戦で対戦したスロバキアのハムシクのPKについては今大会前の12本のPKの映像を記録。タブレット端末からボタン1つですべてのPKを振り返ることができた。
映像だけではない。枠内に飛んだシュートを9つのエリアに、枠外に飛んだものも11のエリアにわけて、どこに蹴り、成功したのか失敗したのかもグラフィック化されていたし、そのPKがプレッシャーの大きくかかる局面だったのか、そうではないのかもわかった。さらには、蹴る前の癖も記録されていた。この日のボヌッチのようにボールの手前で一度止まってから蹴るのか、あるいは助走を長くとるのか、ほとんどとらないのか。そうした癖も一目でわかるようになっていた。
負けてもポジティブな印象を残したイタリア。
もちろん、実際に2本のシュートをブロックしたノイアーの能力が高いことに異論はないが、このPK戦にしてもそれだけの準備をして臨んでいた。それが活きることになったのだ。
試合後にイタリアのバルザーリは涙ながらにこう語った。
「負けてしまったのだから、僕らのやってきた素晴らしいものは何も残らない」
それでも、スペイン相手に完勝するなど、圧倒的な強さをみせたイタリアがポジティブな印象を残したことに変わりはない。
では、ドイツはどうだったか。