話が終わったらボールを蹴ろうBACK NUMBER
「アーセナル浅野」が輝くための条件。
献身性、名手との競争、そして強気。
posted2016/07/06 07:00
text by
佐藤俊Shun Sato
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J.LEAGUE PHOTOS
浅野拓磨がプレミアリーグの名門アーセナルに完全移籍を果たした。
浅野は、昨年サンフレッチェ広島でリーグ戦32試合8得点の成績を残した。スピードを武器に途中出場で試合の流れを変え、点が取れるジョーカーとして頭角を現したのだ。今年は7月5日時点で11試合2得点と多少物足りなさが残るが、アーセン・ベンゲル監督は「才能にあふれた若きストライカー」と浅野の将来性などを評価しての獲得とコメントした。
獲得の背景には、昨季優勝争いの最中チェルシーに0-1(第23節)で敗れるなどの分析から点が取れるFWの補強が優先事項としてあった。だが、シーズンを終えて中盤のマテュー・フラミニ、ミケル・アルテタ、トマシュ・ロシツキと3人がチームを去ったこともあり、スイス代表のグラニト・ジャカを獲得するなど中盤の補強が優先事項とされた。
そして残り2名の補強で前線の選手を狙ったが、レスターのFWジェイミー・バーディー獲得に失敗。その後は若手にシフトし“イランのメッシ”と言われたサルダン・アズムンら数名に候補が上がったが、浅野が最終的に選ばれた。
ベンゲル監督が期待するのは岡崎のような献身性か。
浅野獲得はレスターの岡崎慎司の地道なプレーと活躍が追い風になったのは間違いないだろう。ビッグネームではなくてもチームの勝利に貢献してくれる、いわゆる前線でも「水を運ぶ人」の重要性だ。
もともとベンゲルは名古屋グランパスを指揮した経験から日本人の特性をよく理解し、2001年に稲本潤一、2010年には宮市亮を獲得した。ともにアーセナルで活躍できなかったが、稲本はその後9年間も海外でプレーし、宮市は今もドイツ2部のザンクトパウリでプレーしている。ベンゲルの目のつけどころは、決して間違ってはいないのだ。
献身性と規律を守ることをベンゲルは非常に重視している。たとえば10代にしてアーセナルに加入し、将来を嘱望されたニクラス・ベントナーは素質こそあったが、素行の悪さからレンタル移籍を経て契約終了を言い渡された。
浅野はベントナーとは対照的に、運動量が豊富で前線からの全力守備を惜しまない。タイプは異なるが、岡崎同様にチームの勝利に献身的な役割を果たし、さらにスピードを生かしたプレーでゴールを挙げることを期待されているのだ。浅野自身も「自分がどのくらいやれるのか楽しみ」と目を輝かせて話している。