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イタリアへのトラウマと、分析技術。
ドイツEURO準々決勝、PK勝利の内幕。

posted2016/07/05 17:00

 
イタリアへのトラウマと、分析技術。ドイツEURO準々決勝、PK勝利の内幕。<Number Web> photograph by AP Photo/AFLO

PK戦は最終的に両チーム9人目までが蹴る展開に。この神経戦を制したのは30歳の守護神ノイアーだった。

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ミムラユウスケ

ミムラユウスケYusuke Mimura

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「この試合は今大会のハイライトになるはずだ」

 イタリアとの試合を前にそう話したのは、ドイツのクロースだった。

 しかし、ワインの産地で有名なボルドーで行なわれた今大会屈指の好カードと期待された試合は、静かにスタートしていった。まるで栓を開けられた高級ワインが、空気にふれて、香りがわきたつのを待っていくように――。

 そんな展開になったのには理由があった。イタリアにはデロッシが欠場するなどの理由があったし、何よりイタリアをおそれたドイツが相手にあわせたサッカーを選択したからだった。

 レーブ監督は試合後にこう話した。

「もちろん戦術変更に議論が巻き起こるのはわかっている。ただ、イタリアはスロバキアとは違うんだ。相手は中央に2人のフォワードがいて、両サイドの選手が攻撃時には高くあがってくる。(4バックで採用する)最終ラインで4対4の局面が生まれてしまい、危険だ」

リスクを廃する戦術変更で、こう着状態に。

 ドイツは前の試合で1ゴール、1アシストを記録したドラクスラーにかえて、センターバックのヘベデスを先発で送り出した。攻撃時にはヘベデス、ボアテンク、フンメルスが3バックを形成する3-4-2-1にも見えるが、守備時には右ウイングバックのキミッヒと左ウイングバックのヘクターもさがって最終ラインに5人が並ぶ形となった。

 単なる戦術変更ではない。この日は、リスクを排することに主眼を置いていた。

 イタリアの選手たちが高い位置からプレッシャーをかけにくるときには、無理をせずに前線に蹴りだしていた。ボールを保持しているとき、少しリスクをおかして縦パスをいれれば局面が打開できそうな局面でも、アタッキングサードにいるときをのぞけば、簡単にキーパーにボールを戻していた。

 片方がそういう戦いをすれば、試合はおのずとこう着状態になる。前半はむしろ、イタリアのほうが効果的な攻撃を繰り出していたし、ドイツはボールを持っても危険なシーンは作りだせていなかった。前に出ていって攻撃に絡めるケディラが16分に負傷のためにシュバインシュタイガーと交代を命じられたことも、その流れに拍車をかけた。42分にドイツの前半最大のチャンスとなったミュラーのシュートにしても、クロースのシュートがあたりそこねてシュバインシュタイガーのもとに飛んでいく幸運があったからだった。

【次ページ】 ドイツが力を入れる対戦相手分析のテクノロジー。

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