ブンデスリーガ蹴球白書BACK NUMBER

イタリアへのトラウマと、分析技術。
ドイツEURO準々決勝、PK勝利の内幕。 

text by

ミムラユウスケ

ミムラユウスケYusuke Mimura

PROFILE

photograph byAP Photo/AFLO

posted2016/07/05 17:00

イタリアへのトラウマと、分析技術。ドイツEURO準々決勝、PK勝利の内幕。<Number Web> photograph by AP Photo/AFLO

PK戦は最終的に両チーム9人目までが蹴る展開に。この神経戦を制したのは30歳の守護神ノイアーだった。

過去の経験がもたらした戦術変更だったが……。

 それでもミスだとは認めておらず、当時の行動を正当化する意味でも、またチームに残るイタリアに対するトラウマと苦手意識を克服するためにも、今回のような戦術変更に動かざるをえなかったわけだ。

 もっともこの試合では、後半20分に左サイドに開いて受けたゴメスがエリア内にパスを出し、それを受けたヘクターからのクロスにエジルが合わせて先制。さらに3分後にはゴール前でゴメスがシュートを放つなど、追加点も生まれそうな流れがあった。

 しかし、後半27分にゴメスが怪我でドラクスラーと交代したあたりから、攻撃はトーンダウン。

 その後、ボアテンクのハンドによりPKを与えてしまう。後半33分、ボヌッチが右隅に蹴ったボールにノイアーが反応したが、タイミングがわずかにあわずゴール。試合は振りだしに戻っていた。

 1-1のまま延長戦に入っても両チームともに決定的なチャンスは作れないまま、PK戦に入った。

ノイアーのPK好ブロックと、周到な準備。

 後半33分のPKも含めて味方のPKをあえて一度も見ようとしなかったブッフォンと、味方のPKをすべて見て、自らがブロックしたPKのあとにはわざわざ味方のためにボールを拾いにいったノイアーの姿は対照的だった。

 ノイアーはこの日2回目のPKとなった5人目のキッカーであるボヌッチのシュートと、9人目のキッカーであるダルミアンのシュートをブロック。結局、PK戦は両チームが9人ずつ蹴る形になったが、6対5でドイツが制した。

 ボヌッチがPKを蹴る際には、特徴がある。蹴る直前に一度止まってからシュートを放つのだが、「同じ選手に2度も決めさせるわけにはいかなかった」とノイアーが語ったように、コースとタイミングを完全に読んでいた。

 ダルミアンのPKについても「いつもとは違うコースを狙っていた」と試合後にノイアーは振り返っている。

 実は、PK戦にむけて、ドイツ代表は周到な準備をしていたのだ。それが先に挙げたSAP社と、今大会にむけて開発したもうひとつのソフトである「ペナルティーインサイト」だった。

【次ページ】 PK戦でほとんど負けがない。

BACK 1 2 3 4 5 NEXT
#ヨアヒム・レーブ
#マヌエル・ノイアー
#マリオ・ゴメス
#ジェローム・ボアテンク
#トニ・クロース

海外サッカーの前後の記事

ページトップ