スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
「理想の中小クラブ」の経営手法。
ビジャレアルの悲願、またも潰える。
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph byAFLO
posted2016/05/12 10:30
昨年のスターを売却し、新戦力でつかんだリーガ4位+ELベスト4。ビジャレアルの育成力は際立っている。
上位3チームの「次」の4位を確保。
そして今回のリバプール戦である。
ホームのファーストレグでは互角以上の戦いを繰り広げた末、92分に途中出場のアドリアン・ロペスが劇的ゴールを決め、1-0で先勝。その3日後には大幅にメンバーを入れ替えたチーム構成でバレンシアとのアウェー戦を制し、上位3チームを除く「オトラ・リーガ(その他のリーグ)」の“優勝”とともに来季のCLプレーオフ出場権を確保した。
アウェーゴールを与えずホームで先勝し、国内リーグでの目標も達成した。悲願のファイナルへ向けて万全の状態で臨んだリバプールとのセカンドレグはしかし、悪夢のような一戦となってしまった。
リバプールは、確かにビジャレアルより強かった。
試合の入りは良かった。気後れすることなく攻めに出て、5分、6分と立て続けに惜しいチャンスを2つ作った。だが7分にブルーノ・ソリアーノのオウンゴールで先制された後は、勢いを増したホームチームのアグレッシブなプレスに終始翻弄されてしまう。
それでも81分に決定的な3点目を喫するまでは、ワンチャンスを生かしてアウェーゴールを1つ決めれば逆転できる立場にあった。ゆえにいつも通りにプレーすることができていれば可能性はあったと思うのだが、残念ながらこの日の選手たちは募るフラストレーションをコントロールできず、冷静な判断力を失ってしまっていた。
リバプールのプレスは強く激しかったが、決してダーティーなものではなかった。にもかかわらず、ビジャレアルの選手たちはファウルをとってくれないレフェリーに怒りをぶつけたり、あからさまに報復とみられるファウルを見舞ったりと、早い時間帯から過剰に神経質なリアクションを見せていた。
それはマルセリーノ・ガルシア・トラル監督も同じだ。試合中何度もユルゲン・クロップとやりあっていた彼は、試合後の会見でも「リバプールのインテンシティはルールの範囲を超えていた」、「レフェリーが公平だったとは思えない」などと、ライバルのラフプレーとそれを許したレフェリーへの不満を口にしていた。
だが繰り返す。リバプールはボールの奪い合いで相手を凌駕しただけであって、相手のフットボールを壊すべくラフプレーを連発していたわけではなかった。
この日のリバプールはビジャレアルより強かった。ただビジャレアルの戦いようによって、その結果は2-1にも3-2にもなり得ただけに残念だった。