スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
「理想の中小クラブ」の経営手法。
ビジャレアルの悲願、またも潰える。
posted2016/05/12 10:30
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph by
AFLO
チャンピオンズリーグ、ヨーロッパリーグの準決勝に勝ち残ったスペイン勢4チームの中で、個人的に最も決勝進出を望んでいたチームが唯一、涙をのんだ。アンフィールドでリバプールに0-3と完敗したビジャレアルだ。
借金ゼロの健全経営を貫きながら、良質なフットボールの一貫教育を施す下部組織出身の選手を多数登用し、資金力で上回るビッグクラブと同等、時にそれ以上の成績を出し続ける。
フェルナンド・ロイグ現会長が大株主となった1997年以降、右肩上がりの成長を遂げてきたビジャレアルの成功は、中小クラブの理想的な経営モデルとして国内外で高く評価されてきた。
しかし、そんな優良クラブには1923年の創設以来、いまだ果たせぬ夢がある。初のファイナル進出、そして初タイトルの獲得である。
上位の常連でも、実はまだタイトルがない。
リーガ・エスパニョーラでは上位争いの常連ではあるものの、最高順位は'07-'08シーズンの2位。国内外のカップ戦では意外にもまだファイナルを戦ったことすらなく、今回を含めてあと一歩で決勝進出を逃す失望をこれまで5度も経験してきた。
最初の失望は'03-'04シーズンのUEFAカップで、初出場でのファイナル進出を阻んだのは奇しくも地元のライバル、バレンシアだった。
'05-'06シーズンにはまたも初出場のCLで躍進を遂げるも、やはり準決勝でアーセナルに敗れた。セカンドレグの88分、決めれば2試合合計スコアで同点となるPKを決め損ねたフアン・ロマン・リケルメが呆然と立ち尽くす姿を記憶している人は多いだろう。
3度目は'10-'11シーズンのELだ。ポルトとの準決勝ではアウェーのファーストレグでラダメル・ファルカオに4ゴールと大暴れされ、1-5と大敗。3-2と競り勝ったセカンドレグの健闘もむなしく、初ファイナルへの希望を断たれた。
意外にも初の準決勝進出となった昨季のコパデルレイでは、バルセロナに2試合とも1-3と完敗している。