月刊スポーツ新聞時評BACK NUMBER
プチ鹿島、4月のスポーツ新聞時評。
阪神高山、DeNA今永、そして熊本地震。
posted2016/05/02 15:30
text by
プチ鹿島Petit Kashima
photograph by
Hideki Sugiyama
そもそもスポーツ新聞とは何だろう。
「白なのに黒だとは書かない。負けたのに勝ったとは書かないし、打ってもないのに打ったとは書かない。でも……何て言ったらいいんだろう。スポーツ新聞です。ここだけの話だけど、記事を書く時は少し盛り気味に書きます」
これはデイリースポーツの名物コラム『松とら屋本舗』の一節である(3月30日)。スポーツ新聞の魅力について自ら語っていた。デイリーといえば熱烈な阪神推し。では開幕戦を報じた1面を見てみよう。
「超攻めた開幕戦 金本監督『最強のチームを作ろう』」(3月26日)
1面の真ん中は、金本監督の満面の笑顔。見出しといい、写真といい、華やか。しかしよく見ると、試合は「負けている」。まさに「何て言ったらいいんだろう。スポーツ新聞です」が爆発している。
ファンは負けた翌日は紙面に励まされ、勝った翌日なら一刻も早く読みたい。ゴキゲンに偏るスポーツ新聞の魅力がここにある。
なくてはならない「どうでもいいもの」とは?
デイリーに『松とら屋本舗』があるなら、スポーツ報知には『Gペン』がある。同じく名物コラム。その『Gペン』を、今季からは仙道学編集委員がほぼ1人で担当することになった。
題して『仙ペン』。
開幕前にその告知があったのだけど、その見出しには「無くては困る『どうでもいいもの』仙ペン始まる」とあった。これは糸井重里氏の“激励文”の一節だ。「スポーツ紙に書いてあることは、どうでもいいことなのに、人間という生きものにとって、無くなると困ることなのである」。
おっさんになると、大いなる無駄は無駄じゃないと思えることがある。スポーツ新聞が多様で「どうでもいいもの」に夢中な限り、どこか安心する。