月刊スポーツ新聞時評BACK NUMBER
プチ鹿島、4月のスポーツ新聞時評。
阪神高山、DeNA今永、そして熊本地震。
text by
プチ鹿島Petit Kashima
photograph byHideki Sugiyama
posted2016/05/02 15:30
開幕前から新人離れした活躍を続けていた高山。好不調の波をいかにコントロールできるかが課題。
「世の中が乱れると東スポと朝日の見出しが同じに」
私は朝刊スポーツ紙のほかに、夕方になると東スポも必ず読む。読み続けて四半世紀を超える。東スポと言えば自由闊達な1面が売りだけど、私を暗い気分にさせたのが1995年の地下鉄サリン事件であった。
あのとき、「世の中が乱れると、東スポと朝日新聞の見出しが同じになる」ということを初めて体験した。
一般紙、スポーツ紙、タブロイド紙がすべて同じ見出しになってしまった。どれも深刻さがあふれ、すべての価値が乗っ取られた感。あれ以来、一般紙とスポーツ紙が同じ見出しになる機会が増えたように思う。世の中がシビアになった証明でもあり、無駄なものを楽しむ態度や余裕がなくなっている証拠ではないだろうか。
高山を軸に、各チーム、監督の思惑が揺れ動く……。
さて開幕したプロ野球。4月の華は「新人」だ。まず、なんといっても阪神のドラフト1位・高山俊(明大/名字は正確には“はしごだか”)である。
「新人史上初!! 高山プロ1号がプレイボール弾(デイリー・4月1日)
「長嶋氏激賞4安打 高山」(サンスポ・4月6日)
「秘打!! 高山弾」(サンスポ・4月25日)
高山の初球から積極的にいく姿をみて、高橋由伸のルーキー時代を思い起こした人も少なくないはずだ。どこか平然としている姿も似ている。高橋由伸の前で打つ高山俊。今年の巨人阪神戦の見どころのひとつ。
日刊ゲンダイの「黄金ルーキーが絡んだドラマの数々 阪神高山を軸に動いていたライバル球団のチーム編成」という記事が興味深かった(4月1日)。
「高山のクジを外したヤクルトは、左打ちの外野手の獲得に乗り出し、オリックスを自由契約になった坂口を取った。坂口も開幕からスタメン起用され、貴重な戦力になっている」
さらに関係者のコメントとして「阪神も高山を外していたら外野手の補強に動いただろう。ターゲットになるはずだったのが中日の藤井。(略)でも、阪神は高山が取れたので、結局手を挙げなかった」。
私はタブロイド紙のこういう「噂」も大好きである。
「プロ入り前から多くの選手の運命を左右した高山」とゲンダイは書いた。